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日文研の話題

「2022年度日中妖怪研究シンポジウム」 を開催しました(2022年12月3日)

2022.12.13

 123日(土)、日文研主催の2022年度日中妖怪研究シンポジウムをオンラインで開催しました。3回目となる今回の趣旨は、日本の妖怪研究の最前線を示し、中国の豊かな伝承や造形の理解を深め、次代の妖怪研究の可能性を探ることです。予約初日に申し込みが殺到し、急遽、定員を2倍の1,000人に増やして対応しました。当日は、同時通訳により日本語・中国語の配信を行いました。

 まず劉暁峰・清華大学教授が挨拶し、妖怪の研究を通してこれまで日中の研究者が交流を深めてきたことに触れました。続いて安井眞奈美・日文研教授が趣旨説明に加え、1997年より長年にわたり小松和彦・日文研名誉教授が中心となって、妖怪に関する日文研共同研究会を開催し成果を蓄積してきたこと、また怪異・妖怪画像データベースや怪異・妖怪伝承データベースなどの作成に取り組んできたことなどを紹介し、今後は、研究成果を中国語や英語でも発信したい、と抱負を述べました。

 小松氏は基調講演「日本の妖怪の特殊事情」にて、妖怪は人間の想像力の産物であるとした上で、妖怪を定義づけ、研究のスタート地点を明確にしました。そして、グローバルな妖怪研究を進めるには、日本の妖怪の「特殊事情」を考え直し、比較の際には「怪異」「妖怪」の概念を改めて検討する必要を指摘しました。

 阿地里 居玛吐尔地・中国社会科学院研究員の発表「英雄叙事詩「マナス」の神と鬼怪」は、ユネスコの無形文化遺産にも指定されている、キルギスの数十万にも及ぶ壮大なマナスの英雄叙事詩の概観と日本を含むマナスの研究史からなり、人と神が融合した存在であるマナスの性格が明らかにされました。

 陳崗龍・北京大学教授の発表「モンゴル妖魔モングスのイメージ変遷」では、モングスには、民間のシャーマンが語り継いだ天神のイメージと、チベット仏教の祭典の中に登場した護法神のイメージが影響しており、時代や社会の変化に応じてモングスのイメージが変容する様が解明されました。

 大塚英志・日文研教授は、「北京の都市伝説研究―ウサギマークと終電で帰宅する幽霊たち」と題して、調査・共同研究者である浅野龍哉氏とともに収集した、北京のウサギマークの落書きや、タクシー運転手から聞いた幽霊話など豊富な事例を紹介し、都市伝説研究の視角を提示しました。

 質疑応答では、コメンテーターの陸薇薇・東南大学准教授が小松氏の発表を受けて、中国では古代より国家との関係に注目して妖怪を捉えていく重要性を指摘し、次に佐々木聡・金沢学院大学准教授は、阿地里氏の発表を受けて漢民族の宇宙観とは異なるキルギス族の世界観についてコメントしました。

 近藤瑞木・東京都立大学教授は、陳氏の発表に対し、モングスが視覚化していく際に仏教の影響が大きい点、また人を喰らう鬼とも翻訳されていることから、それらのイメージとの関連性などコメントしました。

 蘇篠・中国人民大学講師は、大塚氏の発表を受けて、北京を流れる川が都市伝説にどのように影響しているのか、また北京以外の都市にも敷衍できる研究なのかと質問し、大塚氏が丁寧に、その可能性について説明しました。

 最後に小松氏が、今後、日本と中国の妖怪・怪異研究を進めていく際には、同じ「鬼」と称していても、中国の鬼と日本の鬼とは違う点に留意する必要がある、という重要な指摘を行って、長時間にわたるシンポジウムは幕を閉じました。同時通訳は、沈丁心・中国社会科学院ポストドクターと丁曼・外交学院准教授が担当しました。

 日本の研究者や一般の方々のみならず、中国の大学生や大学院生、若手研究者の関心も大いに集めた今回の日中妖怪研究シンポジウムは、次の時代のグローバルな妖怪・怪異研究を展開する上で、大きな成果を上げることができたと言えます。この成果を、今後、日本語、中国語で発表していきますので、どうぞご期待ください。

(文・安井眞奈美 教授 / 中国語翻訳・宋丹丹)




2022年度中日妖怪研究研讨会报告


 12月3日(星期六),由日文研主办的2022年度中日妖怪研究研讨会在线召开。本次是第三届研讨会,旨在展示日本妖怪研究的最前沿,加深对中国丰富的口承文化和民间造型等的理解,探索妖怪研究新纪元的可能性。本次研讨会在开始报名的第一天,由于报名申请者蜂拥而至,主办方紧急将名额增加一倍,达到1000人。会议当天,通过同声传译进行了日语和中文两种语言的配信。

 研讨会首先由清华大学的刘晓峰教授致辞,他谈到了迄今为止通过对妖怪的研究,加深了中日两国研究者之间的交流。紧接着,日文研的安井真奈美教授阐述了本次研讨会的宗旨,并介绍了从1997年开始在小松和彦名誉教授的多年带领下,通过举办一系列关于妖怪的研究会议、致力于建立怪异和妖怪图像数据库、怪异和妖怪传承数据库等积累研究成果。此外,安井教授也表明了自己的抱负,即希望今后能够把研究成果用中文和英文等方式传播出去。

 小松教授在主题演讲日本妖怪的特殊情况中,表明了妖怪是人类想象力的产物,并在此基础之上对妖怪进行了定义,明确了研究的起点。并且指出,为了推进全球妖怪研究,有必要重新思考日本妖怪的特殊情况,在比较时重新探讨怪异”“妖怪的概念。

 中国社会科学院的阿地里・居玛吐尔地研究员在《“玛纳斯”史诗中的神与鬼怪》的报告中,通过被联合国教科文组织列为非物质文化遗产、为吉尔吉斯斯坦数十万人熟知的波澜壮阔的玛纳斯英雄史诗概观以及包括日本在内的玛纳斯研究史,揭示了玛纳斯的特征是人与神融合的存在。

 北京大学的陈岗龙教授报告的蒙古妖魔蟒古思的形象演变中,阐明了蟒古思形象受到民间萨满传说中的天神形象以及藏传佛教祭典中出现的护法神形象的影响,并且随着时代和社会的发展,蟒古思的形象也发生了改变。

 日文研的大冢英志教授以“北京的都市传说研究——兔子标记与乘坐末班车回家的鬼魂为题,介绍了与研究者浅野龙哉一起调查收集到的北京兔子标记的涂鸦、从出租车司机那里听到的幽灵故事等丰富的事例,为我们展示了都市传说研究的视角。

 在问答环节中,东南大学副教授陆薇薇点评了小松教授的报告,指出了在中国从古代开始就以与国家的关联来理解妖怪的重要性。接着金泽学院大学副教授佐佐木聪点评了阿地里教授的报告,就与汉族宇宙观不同的柯尔克孜族的世界观进行了讨论。

 东京都立大学的近藤瑞木教授针对陈教授的报告,从蟒古思在视觉化的过程中受到了佛教的很大影响,以及蟒古思也被翻译成吃人的鬼这些方面,就蟒古思与这些形象的关联性等进行了评论。

 中国人民大学的苏筱讲师针对大冢教授的报告提问到流经北京的河流对都市传说有何影响,以及这一研究是否可以推广到北京以外的城市时,大冢教授认真地解释了这种可能性。

 最后小松教授指出,今后在对日本和中国的妖怪、怪异进行研究的时候,即使都被称为,也有必要留意中国的鬼和日本的鬼的不同之处。本次研讨会在小松教授发表重要意见后落下了帷幕。由中国社科院博士后沈丁心和外交学院副教授丁曼担任本次研讨会的同声传译工作。

 此次中日妖怪研究研讨会不仅吸引了日本的研究人员和普通民众,也吸引了中国的大学生、研究生和年轻研究人员的广泛关注,可以说在开展全球范围内妖怪、怪异研究的新纪元方面取得了巨大的成果。该成果今后将以日语、中文的形式进行公开,敬请期待。


文责:安井真奈美
中文翻译:宋丹丹


2022年度日中妖怪研究シンポジウムの詳細はこちら


  • 2022年度日中妖怪研究シンポジウムの様子 2022年度日中妖怪研究シンポジウムの様子
  • 小松和彦・日文研名誉教授(左)と安井眞奈美・日文研教授(右) 小松和彦・日文研名誉教授(左)と安井眞奈美・日文研教授(右)
  • 劉暁峰・清華大学教授(右) 劉暁峰・清華大学教授(右)
  • 阿地里 居玛吐尔地・中国社会科学院研究員 阿地里 居玛吐尔地・中国社会科学院研究員
  • 陳崗龍・北京大学教授 陳崗龍・北京大学教授
  • 陸薇薇・東南大学准教授(左) 陸薇薇・東南大学准教授(左)
  • 佐々木聡・金沢学院大学准教授 佐々木聡・金沢学院大学准教授
  • 近藤瑞木・東京都立大学教授(左) 近藤瑞木・東京都立大学教授(左)
  • 蘇篠・中国人民大学講師 蘇篠・中国人民大学講師
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