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日文研の話題

シンポジウム「世紀転換期の西洋における日本表象―パリとロンドンを中心とする文化的交差―」を開催しました(2026年2月14日)

2026.03.12

 2026年2月14日、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター(伝音セミナールーム)において、国際日本文化研究センター(日文研)と京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターの共催によるシンポジウム「世紀転換期の西洋における日本表象 ―パリとロンドンを中心とする文化的交差―」が開催されました。本シンポジウムは、日文研が所蔵する日本をテーマとした音楽資料を出発点とし、19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパ、とりわけパリとロンドンにおいて、日本がいかに表象されてきたのかを多角的に考察することを目的として企画されたものです。

 開会にあたり、日文研のフレデリック・クレインス副所長より挨拶があり、異文化表象研究の意義と、本シンポジウムを通じて多様な分野から議論が深められることへの期待が述べられました。続いて、光平有希助教より、日文研が所蔵する日本題材の音楽資料について紹介が行われました。日文研には、19世紀から20世紀初頭に西洋で出版された、日本を題材とする歌曲やピアノ曲などの楽譜が多数所蔵されています。これらの資料は、当時の西洋社会において日本がどのようなイメージとして受容されていたのかを知るうえで、重要な手がかりとなるものです。

 研究発表では、5名の登壇者が、美学、音楽、美術、舞台芸術、メディアといった多様な観点から、世紀転換期の西洋における日本イメージの形成と変容について報告しました。まず、大出敦氏(慶應義塾大学教授)は「日本性の創出:クローデルのサウンドスケープ」と題し、フランスの詩人・外交官ポール・クローデルの日本滞在経験に主眼を置きながら、日本の環境や文化がどのように音のイメージとして捉えられ、日本性の理解や表現へと結びついていったのかについて考察を示しました。続いて、安川智子氏(北里大学教授)は「3つの所蔵楽譜から考える20世紀初頭のフランスにおける『日本的な音楽』とその変化」と題し、日文研所蔵の楽譜資料を手がかりに、西洋の作曲家が音楽のなかで「日本らしさ」をどのように表現しようとしたのかを検討するとともに、人的交流や当時の社会的背景も踏まえながら、同時代の文化的ネットワークについて論じました。また、小泉順也氏(一橋大学教授)は「ジャポニスム楽曲を彩るイメージの一貫性と多様性:装飾されたテクストとモチーフの分析を通して」と題し、ジャポニスム関連楽曲の楽譜表紙に描かれた図像に注目しました。日本を象徴するモチーフが西洋社会においてどのような視覚的イメージとして共有されていたのかが、具体的な資料を通して示されました。

 後半では、アンドリュー・エリオット氏(同志社女子大学教授)が「国際的ソーシャル・ネットワークにおける絵葉書と日本(1900〜1930年代)」と題して発表を行い、20世紀初頭に広く流通した絵葉書を取り上げながら、日本を題材とする図像が国際的なネットワークのなかでどのように広まり、日本イメージの形成に影響を与えていったのかについて紹介しました。最後に、山田小夜歌氏(京都精華大学講師)は「英国のバレエにみられる日本表象-舞台芸術、音楽、そして身体」と題して発表し、舞台美術や衣装、音楽、身体表現などを通して、日本が英国のバレエ作品のなかでどのように表象されてきたのかを具体的な事例とともに示しました。

 発表の後には、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センターの竹内有一教授と斎藤桂准教授によるコメントが行われました。その後のディスカッションでは、会場からも多くの質問や意見が寄せられ、日本イメージの形成や文化交流のあり方について活発な議論が交わされました。

 最後に、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター所長の細川周平氏より総括が行われ、音楽や舞台芸術、視覚文化など複数の分野を横断して日本表象を考える本シンポジウムの意義があらためて示されるとともに、今後の研究の発展への期待が述べられました。本シンポジウムは、近代ヨーロッパにおいて日本がどのように想像され、芸術やメディアのなかで表現されてきたのかを、多様な資料を通して考える貴重な機会となりました。

  • 開会挨拶を行うクレインス副所長 開会挨拶を行うクレインス副所長
  • 日文研所蔵音楽資料の紹介をする光平助教 日文研所蔵音楽資料の紹介をする光平助教
  • パネルディスカッションを行う登壇者ら パネルディスカッションを行う登壇者ら
  • 閉会挨拶を行う細川京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター所長 閉会挨拶を行う細川京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター所長
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