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日文研の話題

国際学術シンポジウム 「デジタルヒューマニティーズとデータベースから見る人文学の世界」を開催しました(2024年2月5日)

2024.02.19

 日文研と高麗大学校文科大学は、2023年1月に学術交流協定を結びました。本年は、デジタルヒューマニティーズにかかわる学術会議をソウルと京都で交互に開催することになっています。第1回目の催しとなる今回のシンポジウムでは「デジタルヒューマニティーズとデータベースから見る人文学の世界」というテーマのもと、日文研3名、高麗大3名が発表しました。

 日文研からは、安井眞奈美教授がまず登壇し、「妖怪データベースの活用と今後の展開」について発表しました。日文研の「怪異・妖怪伝承データベース」「怪異・妖怪画像データベース」を紹介しながら、日本人の身体観についての自身の研究について語りました。劉建輝教授「想像×創造する帝国―日文研・吉田初三郎式鳥瞰図データベースを素材に」は、大正~昭和期の絵師・吉田初三郎が描いた植民地朝鮮や「満洲」などの鳥瞰図から日本人の帝国意識を読みとろうとしました。関野樹教授「史資料を扱うための時間情報基盤」は、コンピュータにおける時間情報処理を扱い、古記録の和暦をデジタル的にどのように処理するのか、あいまいな時間をどのように扱うのかといった問題についての研究成果を披露しました。

 高麗大学校からは、前近代の説話文学をセマンティック・データベースの構築により研究した発表(李承垠副教授)、中国でウェブ小説の隆盛にともなって武侠小説の文化的意味がどのように変容しているかを論じた研究(柳澔賢助教授)、新聞データからジェンダーに対する韓国社会の意識を読み取った報告(鄭有珍副教授)がなされ、日文研の荒木浩教授、松田利彦教授がコメントを行いました。

 古典文学・中国現代文学・民俗学・言語学など多様な専門の人文学研究者がそれぞれの問題関心からデジタル技術と人文学の接合について論じ、デジタルヒューマニティーズの現在の到達点と課題を考えさせる刺激的な討論の場となりました。

(文・松田利彦 教授)

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