国際シンポジウム「グローバル・コンテクストにおける妖怪の理論化と歴史化 Theorizing and Historicizing Yōkai in Global Context」を開催しました(2023年12月16日)
去る12月16日(土)に、日文研にて国際シンポジウム「グローバル・コンテクストにおける妖怪の理論化と歴史化 Theorizing and Historicizing Yōkai in Global Context」をオンラインで開催しました。ニューヨークおよびカリフォルニアの時間に合わせた早朝9時からのシンポジウムでしたが、オンラインで約200人の研究者や大学生、大学院生の方々が視聴されました。
これまで日文研では共同研究会や大衆文化研究プロジェクト、妖怪文化研究叢書全4巻の刊行などを通して、長年にわたり「妖怪・怪異」の研究を進めてきました。また妖怪データベース(怪異・妖怪伝承データベース、怪異・妖怪画像データベース)も国内外で広く利用いただいています。
これらの研究成果を今後、さらに海外へ発信していくときに、「妖怪」の概念を今一度、検討しなおしたいと、このシンポジウムを企画しました。そこで近年、妖怪の研究に精力的に取り組み、日文研にも資料収集に来られ、多くの妖怪研究者とも対話された、ハルオ・シラネ氏(コロンビア大学教授)をお招きし、多彩な分野の研究者とともに議論することにしました。
シンポジウムの当日は、まずシラネ氏が「「妖怪」を定義・理論化し、比較する」と題して発表し、続いてディスカッサントの7名が各自のコメントと質問を提示しました。
ディスカッサントは山中由里子氏(国立民族学博物館教授)、木場貴俊氏(京都先端科学大学准教授)、廣田龍平氏(慶應義塾大学等非常勤講師)、大塚英志氏(日文研教授)、マイケル・ディラン・フォスター氏(カリフォルニア大学デービス校教授)、金容儀氏(韓国全南大学校教授)、小松和彦氏(日文研名誉教授)で、司会および取りまとめは、安井眞奈美(日文研教授)が担当しました。
ディスカッサントの皆さんは、シラネ教授の草案を熟読した上で、予めコメントと質問を用意し、シラネ氏もそれに返答を用意され、当日に臨みました。ディスカッションでは、妖怪の変身、妖怪の「身体性」について、また東アジア文化圏の中で日本の妖怪を位置づける重要性、さらにそれを前提として妖怪をいかに理論化するかなどを議論しました。正午まで白熱した議論を続け、最後にオンラインで参加の皆さんにもご発言いただきました。
議論の詳細については、追って研究論考として発表する予定です。また、「妖怪」をテーマにして引き続き議論を深めていきますので、どうぞご期待ください。
(文責:安井眞奈美 教授)
(PDFが開きます)
2023年12月16日(土)9:00~12:00(日本時間)
(※2023年12月15日(金)19:00-22:00(ニューヨーク時間))
【問題提起】「妖怪」を定義・理論化し、比較する
ハルオ・シラネ(コロンビア大学・教授 2019年山片蟠桃賞、第1回日本研究国際賞受賞)
キリスト教、仏教、イスラム教などの大宗教や科学の普及に伴って、民間信仰的なものは排除されていくと言われているが、日本では、民間信仰が宗教(仏教や神道、儒教)に吸収されず、活発に生きて今日に至っている。その基盤である霊魂信仰などから多くの妖怪が生まれ、他の信仰や宗教や科学(本草学など)と共存して変遷してきた。妖怪現象の大きな特徴の一つは、自然環境との深い関わりと恐怖である。自然環境の大きなコンテクストの中で、妖怪を理論化、歴史化していく見取り図を示し、議論のきっかけとしたい。
【ディスカッション】「妖怪」の理論化と歴史化
木場貴俊(京都先端科学大学・准教授)
廣田龍平(慶應義塾大学等・非常勤講師)
大塚英志(国際日本文化研究センター・教授)
マイケル・ディラン・フォスター(カリフォルニア大学デービス校・教授)
金容儀(韓国全南大学校・教授)
小松和彦(国際日本文化研究センター・名誉教授)
安井眞奈美(国際日本文化研究センター・教授)