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海外シンポジウム「服飾・装飾から考える東アジアの近代」を開催しました(2023年10月13日~14日)

2023.11.30

 日文研では、ファッションデザイナーのコシノ ヒロコ氏をお招きし、海外シンポジウム「服飾・装飾から考える東アジアの近代」を開催しました。以下は、劉教授からの報告です。


 10月13日~14日の二日間にわたって、「国際日本研究」コンソーシアムとの共同主催により、「服飾・装飾から考える東アジアの近代」をメインテーマとする海外シンポジウムを開催した。会議は全体で講演(鼎談)、カンファレンス、シンポジウムの三部から構成された。

  第一部では、井上章一所長により「国際日本研究」コンソーシアム海外会員機関の設置を宣言したあと、世界的ファッションデザイナー、アーティストであるコシノ ヒロコ氏を迎えて、井上章一、劉建輝の三人による鼎談「世界に翔く日本のファッション―過去から未来へ」を行った。鼎談では、コシノ氏が同じデザイナーである母親からいかに「対抗」しながら自立し、自らのファッション理念を確立したのか、また欧米に進出した際に、いかに日本、さらにアジア的な要素を世界の各コレクションに持ち込んでいったのか、そしてまだファッションの概念がなかった1980年代の中国などにいかに現場に出向いて指導し、ファッションをめぐる啓蒙活動を行ったのか、それにアーティストとしていかに自ら嗜んできた水墨画、書道、伝統芸能などの素養を現代ファッションと融合させ、総合芸術としてのファッション世界を作り上げたのかなどについて、井上、劉の質問に答えながら熱っぽく語った。

 第二部は国際交流基金日本研究フェロー・カンファレンスとして国際交流基金(JF)との共催により開催された。「新たな展開を求めて――国際日本研究の現在(イマ)」とされたテーマのもとで、佐藤百合氏(JF理事)による「JF-日文研フェローシップ・プログラム」創設、松田利彦副所長による「日文研学術奨励賞」創設の説明が行われたあと、八名の若手研究者がそれぞれ「都市の周縁をめぐってー大阪漫画と映画における釜ヶ崎の表象(1980-2018)」、「リヴァイアサンに記す:現代日本のディストピア文学における法、文学、監禁の関係」、「音楽ジャンルとしての日本:ストリーミング時代における「邦楽」、J-POPと「アニメ音楽」」、「地下鉄のダイヤモンド:京都、クラブ・メトロのドラァグを通して現代日本社会のジェンダーを分析する」、「抄物と室町時代の漢文学の教育桃源瑞仙『史記抄』を例として」、「戦争の記憶の視覚化:映画と映像メディアによる戦時インドネシアと日本の歴史的記憶の(再)構築」、「日本の海洋戦略をめぐる言説:日豪戦略的海洋協力のケーススタディ 2007-2018年」、「日と花:日本のヒッピームーブメントを解き明かす」をテーマに研究発表し、問題意識や研究視野、研究方法等が日々多様化、専門化する世界の国際日本研究の現状を覗かせた。

 第三部の海外シンポジウムは「服飾・装飾から考える東アジアの近代」をテーマとして開催された。井上所長による基調講演(「下着の近代史―ふんどしから考える」)のあと、日本国内からは四名、韓国からは二名、中国からは三名の研究者が登壇し、それぞれ近代以降における日本のウェディングドレスの普及、学生服の洋装化、モダンガールの生態、韓国の洋服導入と服飾政策、近代チョゴリ(襦)の形態美、中国とりわけ上海の服飾の変遷、チャイナドレスの誕生などについて研究報告し、それを踏まえた質疑応答、またその後の総合討論では、日中韓三国がいかに西洋の服装をモデルに服飾・装飾の近代化を図ったのか、それぞれの政策面の相違、伝統的要素の継承、三国間の相互影響などの問題をめぐって活発に議論が行われた。

 二日間のシンポジウムを通して、従来、日中韓それぞれの国内で行われてきた服飾・装飾の研究を初めて横断的に再検証し、三者間の相互影響や政策ないしは伝統継承上の相違点などを明らかにしたのみならず、東アジア三国の服飾・装飾における各様式上の通時的な歴史的経緯も深く掘り下げることができ、東アジア全体の生活史、風俗史の再構築にむけて大変有意義な探究を試みたと評価できる。

(文・劉建輝 教授)

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