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日文研の話題

日文研「国際日本研究」ワークショップ「詩文と芸術における東西の対話―グローバルな視点からその可能性を再考する」を開催しました(2023年10月9日)

2023.10.27

 日文研と嶺南大学環球中国文化高等研究院(AIGCS)との共同主催で開催された本ワークショップは、3名の来訪外国人研究者を報告者とし、Dennitza Stefanova GABRAKOVA 外国人研究員(日文研)の司会のもとで英語によって行われました。

 「アーネスト・フェノロサとエズラ・パウンド:漢字および西洋と中国詩文の再発明」(The Chinese Written Character and the Reinvention of Western and Chinese Poetry: Ernest Fenollosa and Ezra Pound)をテーマとする蔡宗斉氏(香港嶺南大学環球中国文化高等研究院院長)の報告は、フェノロサとパウンドとの間における中国の書体文字についての継承関係を確認した上で、両者の読解の違いを比較するものでした。前者が文字の連結による詩や文の通常の解釈に重きを置いたのに対して、後者は個々の漢字の原義にこだわりながら、そこから特異な表現やイメージを見出し、従来の統辞を離れた創造的な解釈を提示したと分析されました。

 「東西の対話におけるアラン・ワッツ:浅薄な好事家または炯眼の持ち主か」(Reconsidering Alan Watts’ Place in Cross-Cultural Dialog: Dilettante or Visionary?)と題された Stephen J. Roddy 氏(サンフランシスコ大学教授)の報告は、1960年代アメリカのカウンター・カルチャーのカリスマ的指導者だったアラン・ワッツを対象に、伝統的東洋学を政治的に批判したエドワード・サイードの言説に触れつつ、ワッツがさまざまな場で主張する「無為 non- action」から現代的な価値や、今日でもなお通用する社会への有効性を見出すものでした。

 Ada Lombardi 氏(ローマ芸術アカデミー教授)の報告は、「第2次世界大戦後の新現代芸術表現の誕生における日本の重要な役割」(The Fundamental Role of Japan in the Birth of New Contemporary Artistic Languages After the Second World War, at an International Level)というタイトルで、明治以降のイタリアと日本との文化交流を概観したあと、戦後美術にまつわる両者の関係を整理するものでした。とりわけ、工部美術学校に招聘されたアントニオ・フォンタネージとその弟子たちの存在、またその後の未来主義の展開、さらに戦後の「具体」グループを中心とする日欧の相互影響などについて具体的な作品を紹介しながら分析し、多くの新知見が示されました。

  総合討論では、稲賀繁美氏(日文研名誉教授)を中心に聴衆を交えて盛んに議論が行われ、とくに大学院生が積極的に質問、コメントしていたことが印象的でした。

(文・劉建輝 教授)

  • ディスカッションの様子 ディスカッションの様子
  • Ada Lombardi 氏 Ada Lombardi 氏
  • Stephen J. Roddy 氏 Stephen J. Roddy 氏
  • 蔡宗斉氏 蔡宗斉氏
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