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日文研の話題

研究会横断型ワークショップ「Designing a Japanese University for the Globalizing Century」を開催しました(2023年8月22日-23日)

2023.09.13

 日文研共同研究会「日本型教育の文明史的位相」と所外の研究プロジェクト「Designing a Japanese University in the 21st Century」との横断型企画として、標記のワークショップを開催しました。2日間にわたり、教育学、法制史、経営学、人類学、社会学などの様々な分野の研究者が集まり、国際的かつ学際的な研究集会をとりおこなうことができました。大学の国際化経営に従事している専門家も招くことができ、未来志向の実践的議論を行いました。

 初日の8月22日では、まずこのワークショップの共同企画者であるキース・ジャクソン氏(関西学院大学教授)から基調講演がありました。そこでは、未来志向のキーワードとして「デザイン」が掲げられ、内外の状況に即応して新たな大学像をデザインし、それを実践するリーダーシップの重要性が指摘されました。その具体例として、建築家の安藤忠雄氏が取り上げられ、日本には優れたデザインのクリエイターが数多くいるので、それとコラボし、またその発想や手法に学びながら大学をデザインしていくことが主張されました。

 基調講演の後の第1セッションは、ラウンドテーブル①として、瀧井一博(日文研教授)、苅谷剛彦(オックスフォード大学教授)、山﨑洋子(武庫川女子大学名誉教授)、ウ・ユジン(一橋大学講師)、髙橋史子(東京大学准教授)、吉見俊哉(國學院大学教授)、大林小織(大阪大学准教授)が登壇し、それぞれの研究上の関心が披露されたうえで、日本の大学の歴史と現状が議論されました。日本の大学は明治期に創設された帝国大学以来、「国家ノ須要ニ応スル」ものとして観念され運営されてきましたが、そのようなあり方は見直される時期に来ています。国際化はそのための重要なキーワードですが、その実際について議論がなされました。

 第2セッションでは、ラウンドテーブル②として、ジェレミー・ブリーデン(モナシュ大学准教授)、河野真子(京都大学大学院教育支援機構アドミッション支援室室長)、グレゴリー・プール(同志社大学教授)、佐藤浩章(大阪大学教授)、稲田優子(桃山学院大学講師)が登壇し、高等教育の国際化とその実状について、引き続き人類学および大学経営の観点から考察がなされました。

 2日目の8月23日に行われた第3セッションのラウンドテーブル③では、竹内里欧(京都大学准教授/日文研客員准教授)、青木栄一(東北大学教授)、河合淳子(京都大学教授)、ヴィクトリア・キム(立命館大学准教授)、北村理依子(立命館大学助教)、竹中亨(大学改革支援・学位授与機構教授が登壇して、国際的な評価基準やランキング、ジェンダー、少子化など大学が直面している諸課題を中心に議論がなされました。

 そして、最後に総括の全体討議が行われました。本ワークショップでの議論をもとに、英語で研究論集を刊行すべく、プロジェクトが進展中です。本ワークショップの2日間に及ぶ充実した議論の成果が出版されたならば、内向きな悲観論にばかり終始した日本の大学の将来像ではなく、対外的な視野を含みこんだ日本型教育の海外発信のひとつのファクターとして21世紀の日本の大学をデザインして提示することが期待できます。

(文・瀧井一博 教授)

  • 関西学院大学 キース・ジャクソン教授 関西学院大学 キース・ジャクソン教授
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