閉じる

日文研の話題

「海外日本研究機関責任者会議」を開催しました(2022年11月19-20日)

2023.01.20

 第4期中期目標期間(2022年度~2027年度)の中核を担う機関拠点型基幹研究プロジェクト「「国際日本研究」コンソーシアムのグローバルな新展開―「国際日本研究」の先導と開拓―」の初年度事業として、11月19日(土)~20日(日)の二日間にわたり、「海外日本研究機関責任者会議」をオンラインで開催しました。この会議は、世界の日本研究における各地域の現状、直面している課題、また日文研への要望等を把握し、第3期以来の「国際日本研究」コンソーシアム事業のさらなる展開に資するという趣旨の下で、ヨーロッパ地域(19日)と北米・アジア地域(20日)の二部に分けて実施しました。  

 19日の部では、チューリッヒ大学のRaji Steineck氏をはじめ、ヨーロッパ各国の16の大学・研究機関の日本研究部門の責任者(またはその代理)が登壇されました。ヨーロッパ地域における日本研究の現状として、各大学・機関が工夫して学生や社会からのニーズに応えようとしているが、一部では予算削減や教育者不足に悩まされていること、国・地域ごとの研究環境や研究資源に不均衡が見られ、直面している課題もかなり異なっているため、多様な対応が求められていることなどが紹介されました。また、今後の日本研究の展望として、日本を特殊化させるのではなく、周辺を含む地域的な視点、さらにグローバルな視点で問題を捉え直す動向が共有されつつあることが確認され、日本を含むアジア地域との連携に対して強い期待が寄せられました。  

 20日の部では、ペンシルベニア大学のFrederick Richard Dickinson氏をはじめ、北米からは11名、アジアからは16名の登壇者が報告をおこないました。北米地域では、ヨーロッパやアジアに比べて相対的に日本への関心、また日本研究者を目指す大学院生がやや減少する傾向にあること、研究対象として、「仏教」「武士」「戦争」などがいささかマンネリ化し、差別やジェンダー、災害などさらなる多様化、細分化が求められていることなどの問題が提起されました。また、日本国内の研究成果が北米に届きにくいという課題を解消するために、イベントの共催や多言語発信などの方法を積極的に検討すべきだという意見が示されました。アジア地域では、研究者層が厚い一方で、日本研究関連の資料・情報が不足し、その取得もやや困難となっている現状が報告されました。地域内の交流や連携は中・韓・台を中心に進められており、一定の成果も挙げているため、これまでの実績を活かしたさらなる研究者ネットワークの強化が求められています。   

 なお、日文研との交流・連携については、シンポジウムやワークショップの共催、共同研究会への参加、研究者間交流の拡大、研究資源(図書館蔵書、データベースなど)のさらなる利用提供、大学院生の派遣などが、それぞれの地域に共通する要望として提案されました。  

 19日と20日にはそれぞれ全体討論の時間も設けられ、コロナ禍で中断された日本留学再開への期待と課題や、気候変動(それによる渡航制限など)がもたらした今後の交流上の問題についても議論が及びました。また英語など多言語での教育や研究、成果発信等について、各国からそれぞれの視点でその必要性と課題が述べられました。  

 二日間にわたって延べ129名が参加した今回の会議を通じて、世界各地域における日本研究の状況と昨今の課題を網羅的に把握することができ、今後の「国際日本研究」コンソーシアム事業を推進するうえで、きわめて重要な意見交換の場となりました。

(文・劉建輝 教授)

トップへ戻る