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日文研の話題

[Evening Seminarリポート]ドイツ日本研究所との対話(2022年10月6日)

2022.10.28

 ドイツ日本研究所(DIJ)と国際日本文化研究センター(日文研)の間で学術協定が結ばれるのを記念し、2022106日にイブニングセミナー「A Dialogue between Two Japanese Studies Institutes(二つの日本研究機関間の対話)」が開催されました。DIJ所属の研究者6名から研究活動の紹介をしていただいた後、日文研所属の研究者と意見交換がなされました。

 DIJ所長のフランツ・ヴァルデンベルガー氏からはDIJのミッション、主要な研究クラスター、日本研究の意義、様々な研究者の異なる視点の重要性などについてお話いただきました。DIJと日文研はそれぞれ学問の焦点や研究者の視点、ネットワーク、研究発信対象が異なるため、交流を通じて相乗効果が期待されることにも言及されました。

 DIJ副所長のバーバラ・ホルトス氏は現代日本におけるペットに焦点を当てて研究を進めていらっしゃいます。ペットと人間の関係性は少子高齢化や出生率の低下、社会の変化と密接にかかわっており、動物虐待や災害時の対応などの社会問題にもつながっていることをご紹介いただきました。

 DIJ主任研究員のバーバラ・ガイルホルン氏は視覚芸術や演劇による地域活性、震災の文化的表象、舞台における現代社会の演出、伝統文化のジェンダーや権力の問題に注目されています。最近の研究成果として、コペンハーゲン大学と協力して開催した国際学会「Art in the Countryside(地方の芸術)」などについてお話しいただきました。

 DIJ専任研究員のハラルド・クマレ氏は数学とコンピュータ科学のバックグラウンドを持つ日本研究者です。明治・大正期の数学の制度化について博士論文を執筆され、現在では知識の流通という観点から数学雑誌のご研究をなさっています。また、内閣府が提唱するSociety 5.0に注目し、日本におけるデジタルトランスフォーメーションの論説の研究にも取り組んでいらっしゃいます。

 DIJ専任研究員のダーヴィド・マリツ氏は、メコン地域の保健にかかわる外交や多国籍のインフラ、また東南アジアと日本の関係について研究されています。2020年には日本の国会開設130周年に際しバンコクでシンポジウムを開催し、その成果論文が雑誌に掲載されることや、帝国日本の立憲政治が注目を集めていることなどが述べられました。

 DIJ主任研究員のノラ・コットマン氏は移り行く社会経済や国際化の中で個人がどのように人間関係を構築し帰属意識をもつのかに焦点をあて、結婚や家族、生活様式の多様化、ワークライフバランス、ジェンダーなど多様なトピックについてご研究なさっています。また、共編著者として社会科学の分野における日本研究のハンドブック『Studying Japan: Handbook of Research Designs, Fieldwork and Methods(日本を学ぶ:研究デザイン、フィールドワークおよび方法)』を出版されたことをご紹介いただきました。

 日文研所属の研究者との意見交換では、研究機関の性質や所在地は研究者の問題意識にどのようにかかわってくるのか、デジタル化は日本研究をどう変えるかなどが話し合われました。日本語などの非西洋言語は検索エンジンからこぼれてしまう可能性があるため研究機関は注意深くインフラストラクチャーを整備しなければいけないということや、日本研究のための資料や情報の入手を容易にする重要性なども述べられました。さらに、日本研究のハンドブックを作成するにあたってどのようなことに注意し、どんな困難があったかなどの質問もなされました。今後、新たな日本研究のハンドブック作成についてのシンポジウムやワークショップを共に開催できたら良いのではないかという声も上がりました。

(文・坂知尋 プロジェクト研究員)

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