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日文研の話題

[Evening Seminarリポート]コロナ禍のいま、あなたにとっての生きがいは?(2021年6月3日)

2021.06.16
 6月3日、ジャミラ・ロドリゲス外国人来訪研究員を講師に迎え、英語によるイブニングセミナーがオンライン開催されました。
 
 文化人類学者で身体性や儀礼研究を専門とするロドリゲス研究員は目下、コロナ禍における沖縄をテーマとした調査研究に取り組んでいます。本セミナーでは、“Remaking the lived body: surveying the voices of the pandemic in everyday life”(身体を再生させる——パンデミック下での日常生活に関する調査を通して)と題し、コロナ禍という体験をトピックに実施した国際調査のうち、日本国内から寄せられた「声」について中間報告をしてくれました。
 
 この調査プロジェクトは、沖縄科学技術大学院大学の「身体性認知科学ユニット」(ECSU)が主宰し、ロドリゲス研究員もチームメンバーとして参加しています。コロナ禍におけるソーシャル・ディスタンスや外出自粛といった多くの規制が、いかに社会や個人の生活に打撃を与え、また今後も影響を及ぼし続けるか。今回の経験により、人びとが他人や社会、自分自身をどのように考え、何を感じたか。昨年6月に英国の研究者らと共同で主にオンラインで行った英語・日本語・スペイン語による記述式調査の結果、51カ国から2,543件の回答が集まり、うち日本人による回答は434件あったといいます。
 
 特に、ロドリゲス研究員が関心を持つキーワードとして取り上げたのが「生き甲斐」でした。コロナ禍によって変化を余儀なくされた生活のなかで、何に「生き甲斐」(purpose in life)や「幸福」(well-being)を見出そうとしているか————。個人や社会、文化によって、その言葉の意味や概念は様々であり、例えば英国人と比較すると、日本人の回答からは、やはり日本の文化や社会を背景とした独自の「生き甲斐」観が見えつつあると指摘します。「感染拡大防止に貢献したい」「地域の活動に積極的に参加したい」「医療従事者への感謝の気持ちを忘れずに」「資格取得を目指して学習に専念」「これを機会に新しい働き方や人生の楽しみ方を発見する」「有意義に生活したい」「最後まで人間らしく生きたい」。
 
  パンデミックという非日常を体験し、身の回りを見直すことによって得た「生き甲斐」や「幸福」観が、コロナ禍が収束したのちにまたどのように変わるのか、さらなる追跡調査と分析が待たれます。
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)
 
  • ジャミラ・ロドリゲス外国人来訪研究員ジャミラ・ロドリゲス外国人来訪研究員
  • Zoomを利用したオンライン開催の様子Zoomを利用したオンライン開催の様子
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