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日文研の話題

[木曜セミナー・リポート]宗教間対話と日本のキリスト教―「他者」による信仰の変容―(2020年10月22日)

2020.11.16
 10月22日、発表者に藤本憲正機関研究員、コメンテーターに磯前順一教授を迎え、安井眞奈美教授による司会のもと「宗教間対話と日本のキリスト教―「他者」による信仰の変容―」と題した木曜セミナーが開催されました。今回も、コロナウイルス感染症対策を講じ、会場・オンラインでの同時並行開催でした。

 発表者の藤本機関研究員は、キリスト教と諸宗教の関りについて論じる神学の一分野「宗教間対話」の定義や歴史的背景などを踏まえた上で、自身がいま取り組んでいる日本基督教論(日本における近代のキリスト教)と世俗主義とのかかわりに主眼を置いた研究報告を行いました。とりわけ、欧米からもたらされたキリスト教論を日本の文化や社会に適合させようとする試みについて、海老名弾正や魚木忠一の思想を具体的に取り上げつつ詳述し、世俗主義を宗教の側から見ていく過程で浮かびあがってくる、従来の宗教学・人類学における枠組みを超えた宗教間対話の在り方について紹介をしました。

 藤本機関研究員の発表後、コメンテーターの磯前教授からは「対話」という行為が問われる前提とはなにか、つまり宗教間での「対話」ができたのはなぜか?という歴史的な問いかけがなされたのち、国家や民族などに囚われない土着化しないキリスト教論というものはどういう形で可能になってきたのか、さらに、「正しさ」「真理」というものが「対話」や「宗教」にはどうしても必要になるが、信憑性や真理性を伴わない「対話」は可能か、といった発表の内容を巡り、藤本機関研究員と議論を交わしました。また、フロアやオンライン参加者との質疑応答では多くの質問が投げかけられ、本報告でのキーワード「対話」と「世俗主義」「世俗性」をどのように捉えるのかなど、様々な意見が交わされました。また、キリスト教だけでなく、仏教・神道・儒教などの他宗教との関連性やそれら各宗教との「対話」についての議論の深まりなど、今後の研究深化への期待が寄せられました。

 
(文:光平有希 総合情報発信室 特任助教)

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