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憲章

国際日本文化研究センター憲章

令和5(2023)年6月8日 制定

前文

国際日本文化研究センター(日文研)は、日本で最初に「国際日本研究」をかかげる研究所として1987 年に創設された。創設以来、日文研は、日本研究の国際化・総合化を志向し、日本研究のフロンティアを開拓することに努めてきた。その伝統を継承し、新たな日本研究のあり方を探求し続けていくために、ここに国際日本文化研究センター憲章を定め、その依って立つべき理念を今一度明らかにする。

1.「国際日本研究」の追究

日文研の目ざす国際日本研究とは、日本社会の単一性や同質性を決して自明なものとは見なさず、内と外の両面から日本という時空間における異文化の多層的かつ多元的な構成と交流を重視する。それは、日本研究を一国主義的な枠組みから解き放ち、日本の歴史・社会・文化の多文化性・多元性をとらえなおす創発的なプロジェクトと位置づけることができる。このような国際日本研究を展開するために、日本の歴史と現在の問題状況をドメスティックなミクロの視点のみならず、国際的に俯瞰するというマクロな視点で討究し、人類社会の価値創造に寄与できるような知識を生み出すことを目ざす。

2.学際性の重視

日文研は、日本という時空間における異文化の多層的かつ多元的な構成と交流の様相を内と外の両面からとらえていくために、さまざまな分野の知見を活用しつつ、学際的・総合的な日本研究を志向する。すなわち、狭義の日本研究を超え、世界的に展開されつつあるアジア研究の一環としての日本研究、あるいはグローバルヒストリー、グローバル文学研究、さらには自然科学も視野に入れながら、人文社会科学全体に通底する問題意識を日本研究からすくいあげ提示できる分野融合型の学問を牽引する。

3.大学・研究機関との連携

日文研は、創立以来、研究者の自由な発想と自律性のもとに多様な共同研究を展開してきた。これからも、大学共同利用機関として、国内外の大学・研究所等から研究者が集う中核的研究拠点の役割を果たすために、日文研の持つ国際的な学術研究ネットワークと共同研究を連動させながら、世界最先端の日本研究を推進していくための努力を惜しまない。そのために、学問の自由を根本的原理としつつ、多様な研究者が主体的な研究を創造する開かれた学問研究の場になるよう不断に努める。

4.社会・地域との連携

日文研は、国際的・学際的な研究から生み出された成果を積極的に社会に発信・還元し、地域における学術文化の発展基盤づくりに貢献する。同時に、社会の要請に応える研究活動を常に模索し、研究機関と社会を架橋する双方向的な連携を推進する。そのためには、長期的視野に立って有用な研究資料を保全し広く共有することも重要である。これらの試みを通じて、日本文化に関心をもつ若い世代を次世代の日本研究を担う専門的日本研究者へと育成することを目ざす。

5.人権の尊重

日文研は、多様な国籍・出身地域の研究者が集い、それぞれが学問基盤を異にしながらもその知見を集積する越境的な日本研究を目ざす。そのためには、異なる価値観と背景をもつ他者を理解することは欠かせない。日文研の構成員は、開かれた対話を通じて多様な意見に耳を傾け、互いの人格・個性・思想を尊重しつつ、自由な知的探究の場を創ることに努める。日文研は、「国際日本文化研究センター人権宣言」に基づき、研究・教育および業務を行う上で、いかなる人権侵害行為も許さず、誰もが人権を尊重され互いの信頼のもとに活動できる環境を整えることに積極的に取り組む。

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