姫路文学館にて企画展「戦後80年 戦時下の大衆文化―「外地」へのまなざしを振り返る」開催中(会期:2026年1月17日(土)~3月29日(日))
先の大戦時、なぜ「大衆」は熱狂的に戦争へと駆り立てられていったのでしょうか。また、当時「外地」の前線へ送られた画家・作家たちは、そこで何を見て、何を「大衆」に伝えたのでしょうか。その問いに迫る企画展「戦後80年 戦時下の大衆文化――〈外地〉へのまなざしを振り返る」が、姫路文学館にて開催されています。
昭和6(1931)年の満洲事変から昭和20(1945)年の終戦に至るまでの約15年、戦争体制が国民生活の隅々にまで浸透し、戦線は中国大陸や南太平洋諸地域といったいわゆる「外地」に拡大していきました。その間、戦意高揚や戦争の記録を目的として、多くの画家や作家が戦地に派遣されました。
本展では、こうした画家・作家が戦時下で生み出した書籍・絵画・絵葉書に加え、当時の地図や宣伝ビラなど多様な資料を展示しています。その数およそ700点。劉建輝教授(日文研)が長年にわたり収集した資料、ドナルド・ラップナウ氏から昨年日文研へ寄贈いただいた約6万点の資料群、姫路市平和資料館や姫路文学館の収蔵資料などから選りすぐったものです。また、展示は〈作家と兵士が見た大陸〉、〈従軍画家の描いた大陸前線〉、〈南へのまなざし 画家たちの“南洋”表象〉、〈前線と銃後を支える大衆 ラップナウ・コレクションに見る戦時下の文化生産〉の4章で構成され、戦時文化の諸相を多角的に提示・検証するものとなっています。
本展には、当時の軍事郵便絵葉書が数多く展示されており、中には伸びやかな風景を描いたものも多く含まれます。劉教授の集めた5,000枚を超える絵葉書には、意外なことに戦闘場面の描写は少なく、寧ろ風景や風俗を題材にしたものが半数以上を占めるとのことです。戦意高揚に寄与する絵を描くはずだった画家たちが、戦闘には直接関わらない絵・表象の方を多く残したのはなぜか。軍事郵便絵葉書には何が描かれ、何が描かれなかったのか―その意図を問い直す契機ともなるでしょう。現地で描かれたラフスケッチと、それを元に制作された絵葉書を比較することで見えてくるものもあるかもしれません。
会期は今週末の3月29日(日)まで。来場を検討されている方は、ぜひこの機会に会場へ足をお運びいただき、これまでの美術史において十分に扱われてこなかった戦時下の資料に光を当てる本展の意義と面白さを感じていただければ幸いです。
本展の詳細はこちら:
https://www.nichibun.ac.jp/ja/events/other_events/2026/01/17/
関連書籍:
劉建輝、石川肇編『戦時下の大衆文化―統制・拡張・東アジア』KADOKAWA、2022年2月
劉建輝編著『絵葉書にみる日本近代美術100選』法蔵館、2024年10月