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日文研の話題

第4回 日文研-京都アカデミック ブリッジ「京都の学を語ろう〜京都大学創立125年〜」を開催しました(2022年3月9日)

2022.03.23

 3月9日、京都新聞との共催による「第4回 日文研-京都アカデミック ブリッジ」が、京都大学百周年記念ホール(左京区)で開催され、185名が参加しました。


 本年、京都大学は創立125周年を迎えます。今回はいずれも同大学出身者である京大人文科学研究所(人文研)所長の稲葉穰氏、大阪の国立民族学博物館(民博)館長の𠮷田憲司氏、そして日文研の井上章一所長の3名が「京都の学を語ろう」をテーマに、京都で培われた学問の歩みと今の思いを率直に語り合いました。


 光平有希特任助教を進行役に、冒頭では、それぞれが印象に残る研究者の思い出やエピソードを振り返りました。学生時代に東洋史学者・宮崎市定氏の『科挙』に感銘を受けたという井上所長が、「本好きを唸らせる書き手はそういない。稀有な人だ」と語ると、稲葉氏も「(宮崎氏の)平明な論文に目を見開かされた」と同調。「一次史料を読み込んだあとで今の時代の人びとに寄り添うような言葉を選んで書く大切さや、学んで考えるときの心の広やかさを教えていただいた」と偲びました。また、1970年代から梅棹忠夫氏が主宰する人類学のフィールド調査に参加したという𠮷田氏は、梅棹氏から受け継いだものとして、未知の領域を切り開く「パイオニア・スピリット」と、地べたに這いつくばるような調査をしながら同時に世界の動きをみるという「鳥瞰図のような広い視点」を挙げ、それは「常に持っていたい」と述べました。


 90年余りの長い歴史のなかで「共同研究」の伝統を率いてきた人文研ですが、現在は大小二つの形式を並行させて、若手研究者の育成に注力しているといいます。今後はオンラインを活用したハイブリッド型で一般にも公開すれば、「21世紀型の共同研究にもなりうるのではないか」と、稲葉氏は展望を語りました。𠮷田氏も、共同研究は「人文研から受け継いだ最大の財産」といい、モノ資料を通じた人類の記憶と技術のデータベース化に取り組んでいるという国際共同研究の事例を紹介してくれました。


 最後に、コロナ禍、および現在の世界情勢に話題が及ぶと、「一人ひとりがどのように生きていけば良いかというのが人文学のよすがであり、そこに価値があるのではないか」、「思考を旨とする人文科学はすべての学問の基礎である。文化の多様性を認めながら、共生社会をどのように作っていくかの指針を示したい」などの意見が出ました。それとともに、どのような時勢にあっても、かつて「京都学派」と呼ばれた人びとのように、誰もが自由に研究できる雰囲気を守りたいという声も切実に響きました。



(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)

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