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日文研の話題

第3回日文研-京都アカデミック ブリッジ「京で語る医と文化——宗田一生誕100年」を開催しました(2021年10月26日)

2021.11.01
 10月26日、京都新聞との共催による「第3回 日文研-京都アカデミック ブリッジ」が、京都文化博物館別館ホール(中京区)で開催され、約100名が参加しました。

 日文研では1998年、京都の医学史研究者であった宗田一氏(1921-1996)旧蔵の約13,000冊の書籍をはじめ、15世紀から現代までの日本の医学・薬学、さらには蘭学に関する膨大な資料一式の寄贈を受けました。そのコレクションの一部は現在、図書館の「宗田文庫」で閲覧に供するとともに、「宗田文庫図版資料」データベースとして公開しています。

 今回は、宗田氏の生誕100年を記念し、寄贈コレクションにゆかりのある研究者が集い、宗田氏が生涯をかけて築き上げた「医療文化史」の成果をあらためて振り返りながら、今後の学問の展望について語り合いました。

 はじめに、井上章一所長の開会挨拶に続き、生前の宗田氏と親交があり、寄贈当時に日文研客員教授として受け入れを担当した松田清氏(京都大学名誉教授・神田外語大学客員教授)が、コレクションの概要と宗田氏の略歴、著作等を紹介しました。そのうえで、京都で長い伝統を持つ漢方医学や蘭学の歴史研究をベースに、科学的な西洋医学と心理的側面を重んじる漢方、さらには病をめぐる日本文化までを網羅し、健康と「心」の問題に深く関与した宗田氏の足跡を偲びました。

 安井眞奈美教授の進行によるディスカッションでは、現在、コレクションの未公開資料の調査を担当している光平有希特任助教が、書籍以外に特色のある「モノ」資料——風景や人物スケッチの残る従軍手帳・研究ノート、薬袋や疫病退散の護符、外科手術道具など——の紹介を通して、医療を人間の営む文化史からとらえた宗田氏の視野の広さを印象づけました。

 また、元々は医学史を研究していたというフレデリック・クレインス教授は、江戸時代に京都蘭方医学の祖といわれる小石元俊が筆を執った珍しい解剖図をカラー図版で詳しく解説。人体を理想化する西洋式の図様とは一線を画した細密な解体図に、蘭方医らの科学的精神の在り様を指摘しました。

 最後に、本草博物学・生薬学の専門家である伊藤謙氏(大阪大学総合学術博物館講師・日文研客員准教授)は、薬学も本草学も実は扱う範疇が幅広く、医療を多面的に追究した「宗田先生には親近感を覚えた」と述べ、漢方医学の伝統が脈々と残る京都で本年度から開始した共同研究「東アジアのMultidisciplinary Scienceとしての本草学の再構成」への意気込みを語りました。

(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)

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