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日文研の話題

特別展 JAPAN SUPERNATURAL がシドニーで開催されました

2020.03.19
 2020年3月9日、シドニーのニューサウスウェールズ州立美術館にて4ヶ月にわたって開催された特別展 JAPAN SUPERNATURAL が終了しました。展示には連日多くの人々が訪れ、美術館によると来館者全体の約半分が35歳以下とのことです。
 
 ニューサウスウェールズ州立美術館アジア・アート主任学芸員のメラニー・イーストバーンさんとアシスタント・キュレーターの河上友紀さんは、展示に先立ち2019年4月に日文研を訪れ、日文研が所蔵する妖怪画のコレクションを観たり、日本の妖怪の多様性について議論したりしました。展示の図録 “JAPAN SUPERNATURAL; ghosts, goblins and monsters 1700s to now” には日文研の妖怪画が数多く紹介され、エッセイの中には小松和彦日文研所長の “From the past into the future: the enduring legacy of yōkai”も所収されています。
 
 展示場入り口に吊された京都の提灯や、廊下の壁にあしらわれた妖怪たちの影絵が、人々をJAPAN SUPERNATURAL展へと誘います。
 
 展示の最初には能と狂言の面が飾られ、百鬼夜行絵巻の前の大型スクリーンに人魂のイラストが浮かび上がります。これに触れると百鬼夜行の妖怪たちが現れ、英語と日本語で名前が映し出される仕掛けになっています。妖怪の名前は日文研の資料などによって調べられ、おもに付喪神が選ばれました。
 
 海外のさまざまな美術館が所蔵する鳥山石燕、葛飾北斎、歌川国芳、河鍋暁斎、月岡芳年など、江戸から明治にかけて活躍した絵師たちの作品が展示され、これらの作品を通して、日本の妖怪の豊かな歴史が示されました。また特筆すべき点として、ニューサウスウェールズ州立美術館は、今回の展示にちなんだ作品を世界的に著名な村上隆氏に委託しました。彼の作品は、妖怪をはじめとする霊的な存在の過去と現在を、力強くつなげています。
 
 展示期間中、百鬼夜行のパフォーマンスやスタジオジブリの映画祭、ライブ音楽、日本の美術における妖怪画の講演など、さまざまな企画が催されました。安井も、3月8日の国際女性デーに先立ち、妖怪と女性について講演しました(“Becoming yōkai: images and folktales of ubume”, 3月4日)。今回の滞在と研究は、ニューサウスウェールズ州立美術館のエドモンド・ケイポン・フェローシップによるものです。


(文・安井眞奈美 日文研教授)
  • シドニーのニューサウスウェールズ州立美術館シドニーのニューサウスウェールズ州立美術館
  • ジャパン・スーパーナチュラルの広告ジャパン・スーパーナチュラルの広告
  • 妖怪のいる廊下妖怪のいる廊下
  • 妖怪のタッチスクリーン妖怪のタッチスクリーン
  • 村上隆の作品を観る来館者村上隆の作品を観る来館者
  • 美術館後援者のための発表、安井眞奈美とメラニー・イーストバーン美術館後援者のための発表、安井眞奈美とメラニー・イーストバーン
  • 2020年3月4日の講演(安井)2020年3月4日の講演(安井)
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