小松和彦名誉教授が令和7年度文化勲章を受章されました
このたび、本センター前所長の小松和彦名誉教授が令和7年度の文化勲章を受章されました。
小松先生は文化人類学および民俗学を専門とし、妖怪研究の第一人者として国内外で幅広く活躍されてきました。日文研にて、怪異・妖怪に関する共同研究会を主催し、さまざまな専門の研究者を牽引して、「妖怪学」「妖怪文化論」といった新しい学問分野を確立されました。小松先生は、妖怪が研究対象と見なされていなかった時代に妖怪を “発掘” し、そこに光を当て、日本文化の闇の部分を解明されるとともに、その奥深い魅力を数多くの著作や講演などを通してわかりやすく示してこられました。妖怪は、人間の文化を解明する研究対象として、また映画やアニメ、マンガ、小説などにおいても欠かせない存在として、国内外で人気を博しています。
小松先生は、信州大学教養部講師・助教授、大阪大学文学部助教授・教授を経て、1997年より本センター研究部教授(併:総合研究大学院大学教授)として教育及び研究に従事され、また2012年4月から2020年3月までの8年間、本センターの所長として、センターの運営にも多大なるご貢献をいただきました。2013年に紫綬褒章、2016年に文化功労者として顕彰を受けられ、2020年秋には瑞宝重光章を受章されました。
『憑霊信仰論』(伝統と現代社、1982年)、『異人論-民族社会の心性』(青土社、1985年)、『妖怪学新考-妖怪からみる日本人の心』(小学館、1994年)、『百鬼夜行絵巻の謎』(集英社、2008年)、『鬼と日本人』(KADOKAWA、2018年)など数多くの著書を刊行されるとともに、日文研にて怪異・妖怪に関する絵巻物などの絵画資料を収集し、早くから資料のデジタル化を進めてこられました。また多くの若手研究者を率いて妖怪データベースを制作し、それらは今日に至るまで一般の人々にも広く利用されています。海外各地でも、妖怪や日本文化に関する講演、講義を続けてこられました。また、高知の民間信仰「いざなぎ流」について数十年にわたる調査・研究を行い、『いざなぎ流の研究-歴史のなかのいざなぎ流太夫』(第22回高知出版学術賞受賞、角川学芸出版、2011年)を上梓され、全貌のわからなかったいざなぎ流の解明と記録にも尽くされました。近年は「怪異・妖怪学コレクション」シリーズ(全6巻、河出書房新社、2025年)を監修し、2000年以降の人文学における「怪異・妖怪学」研究の最先端を示されました。
このたびのご受章に際し、教職員一同、心からのお祝いと、小松先生の今後ますますのご健勝、ご活躍をお祈り申し上げます。