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共同研究2024年

近代日本における「文人文化」の変容

ユニット
大衆文化研究の展開
研究代表者 戦 暁梅教授

 本共同研究は、「文人」の概念を広く「教養がある人、文雅を愛する人」として捉え、「文人文化」の近世から近代への連続性に注目しつつ、その近代における変容の具体像を文学史、美術史、書道史、煎茶文化史、建築史など、複数分野から明らかにすることを目的とする。
 江戸時代の中期以降、詩文書画を愛好する「文人」層の定着とほぼ同時期に中国から「文人画」が伝来し、独自の発展を経て幕末から明治期にかけて日本全国で盛んになった。文人文化は漢詩や文人画の作品世界に留まらず、漢詩文、書画、煎茶などの趣味的会合と文人的趣向が反映される建築、庭園空間にまで広がりを見せた。同時に、文人画が持つ趣味性は幅広い社会層に支持され、江戸と上方から地方にまで浸透していき、作品の優劣判断と別の次元で、「詩・書・画」を中心とした総合的芸術活動として日本文化の重要な一翼を担っていた。
 ところが、明治以降、西洋文化の流入により、この多様な内容を持つ文人文化は社会の表舞台から急速に姿が消えたように見えた。これはもちろん歴史記述が新しい事象に傾いた結果であり、文人文化の消失を意味するものではない。筆や墨の表現は新たな作品世界を創出するために変容し、漢詩人や書画愛好者の雅集は政治、外交、文化交流の場として機能しはじめた。「文人文化」を構成する諸要素は新たな時代要請のなかで変容しつつ、近代以降も存続していた。本共同研究では、近世から近代への連続性を踏まえたうえで、これら「文人文化」の近代における変容の具体像について、東アジアとのつながりを視野に入れて各分野から総合的に検証していく。

センター研究者等 戦 暁梅 国際日本文化研究センター・教授
磯田 道史 国際日本文化研究センター・教授
劉 建輝 国際日本文化研究センター・教授
共同研究員 足立 元 二松学舎大学文学部・准教授
池澤 一郎 早稲田大学文学学術院・教授
稲賀 繁美 京都精華大学・特別任用教授
柏木 知子 兵庫県立美術館・学芸員
菅野 智明 筑波大学芸術系・教授
呉 孟晋 京都大学人文科学研究所・准教授
塩谷 純 東京文化財研究所・上席研究員
島村 幸忠 大阪経済大学・講師
塚本 麿充 東京大学東洋文化研究所・教授
中谷 伸生 関西大学・名誉教授
松村 茂樹 大妻女子大学文学部・教授
村田 隆志 大阪国際大学国際教養学部・教授
矢ケ崎 善太郎 大阪電気通信大学工学部建築学科・教授
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