オオオトコ,ヤマノヌシ 1976年 新潟県 槍が上手な狩の名人が、御神楽岳のおりんという場所に出かけたところ、夕方になって迷ってしまった。煙草を一服していたら、6尺(180㎝)もある化物が出てきた。「何処から来た」と聞かれたので、狩に来て迷ったと言ったら、「ここは人間の来るところではない。すぐ帰れ。俺に会ったことをしゃべったら、命は貰う」と言われた。狩の名人はそこを立ち去って家に帰り、このことは長らく黙っていたが、臨終の床で周りの人に始めて明かした。この大男は山の主だったのだろう。
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ワライオンナ 1943年 高知県 安芸郡和食村で、深山に入った山師が夕方、小屋で尺八を吹いていると、綺麗な女の人が尺八を聞かせてほしいと小屋にきた。女は笑い女と名乗ったので、山師がそれなら笑いを聞かせてくれと頼むと、笑い声は次第に大きくなり、山から谷に響いた。山師が怒って大鋸や手斧を投げたが、女はそれをバリバリと食べた。どうすることもできないと思ったら、鶏の時の声が響き、笑い女は消えた。鶏の声は山師の持っていたお守りが出したものだった。吾川郡にも同様なものがある。
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ヤマンバ 1932年 愛知県 文明年間のある8月の夜、郷士が犬を連れ狩りに出た。犬が騒ぐので弓を用意しながら尾張富士の頂上の本宮の社へ出た。そこには身の丈1丈あろうと思われる大女が拝殿に向かって立っていた。矢で射ると地が揺らぎ、不気味な風が吹き、血の跡を残し女の姿はなくなった。その跡を追うと知り合いの家へ続いていた。何か変わった事はないかと問うと、妻が今暁から病気であるという。寝床を確認すると姿は無く、和歌が書き付けられていた。
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ヤマオナゴ 1992年 宮崎県 男が山仕事を終えて帰る途中、笠を飛ばされて薮に入ると、足元までの長い髪をした、白衣の女がケタケタ笑っていた。ヤマオナゴだと思い、とっさにキセルを構えて身構えた。女は身構えると下がり、退くと近づいてくる。これを繰り返して村まで近づいたら、ようやくあきらめて帰った。男は恐怖のあまり、人が変わったようになってしまったという。
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(オオガオノオンナ) 1980年 高知県 土佐国の猟師が、鹿を捕ろうと鹿笛を吹いたところ、俄に山が騒ぎ出して何かが来る様子になった。樹間で待ちかまえていると、伏木の上に常人よりも3つや4つ分ある大きな女の顔が見えた。頭の下は見えなかった。撃ち損じると大変だと思いそのままやり過ごした。これは『山海経』にある鴞の類である。
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ツルニョウボウ 1934年 新潟県 昔々、山奥にいた狩人がどこからか訪ねてきた美しい女を嫁にもらった。女は暇さえあればキリキリシャンシャンと機を織っていた。秋の初め頃、布が出来上がり、天女の羽衣と言われ、お城のお姫様が買った。家に帰ると女はいなくなっていていた。狩人は百姓になり、ある日山深くに行くと、松の木の上に羽毛が1本もない鶴がいて、懐かしげに見下ろしていた。
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ヤマノカミ,ロウバ 1983年 岡山県 苫田郡富村大には、山中の経験を克明に記憶している老練な猟師がいた。その話すところによれば、山で老婆に出会ったら、物陰に隠れてその姿を見ないようにしなければならない。山中にいる老婆は山の神の姿であり、これをまともに見てしまうと必ず災いがあるのだという。
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オシドリ,フジン 2002年 栃木県 犬伏町下の谷に鴛鴦塚がある。太田二郎左エ門尉式宣という弓術の達人が、鳥獣を射ていた。ある日三毳山で狩をしていたが終日獲物がなく、帰ろうとしている時に阿曽沼の東岸で鴛鴦を見つけて射て持ち帰った。その夜熟睡していると忽然として戸外に声がして、妙齢の婦人が歌を詠み、号泣した。3、4回それが続いたので一喝し戸を開けると一羽の鳥が飛び去った。不審に重い夜が明けてから鴛を射たところに行ってみると、鴛が菰の茎を咥えて死んでいた。式宣は悔悟して、自ら塚を築いて鴛を併せて埋葬し、入道した。
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テング 1932年 高知県 この村にいた久六という男が、ある時天狗に攫われて虚空高く舞い上がってしまった。村人が騒ぐ内に、天狗は見えないが久六の体だけが前の山の松の梢をすれすれに飛び去って行くのが見えた。翌日村人が探してみると、3里ほど隔てた岡豊村の瀧戸という所の巌に、久六の皮が張りつけてあった。
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ダイジャ,ウシイシ 1935年 群馬県 奥上州の為政者がある宴席で美しい侍女に見とれ、寵愛した。ただこの侍女は昼には姿が見えず、夜だけ見えた。その訳を聞くと、自分は庄田の者だが、結婚してくれれば昼も侍ることができるという。そこで華燭の典が行われ、数年後に男児が生まれた。この侍女は庄田の沼に住む大蛇の化身で、その輿入れの際に乗ってきた輿は石になり牛石と呼ばれた。その男児は顔が長く、身体に鱗があったという。
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ダイジャ 1929年 長崎県 ある長者の息子がいつの頃からか夜森の中から聞こえてくる清らかな声にひかれた。好奇心から見に行くと乙女が歌っていて、二人は愛し合う様になった。両親が乙女の素性を確かめるため針に糸をつけて着物に縫った。翌日、糸をたどっていくと、乙女の正体は普賢岳の洞窟に住む大蛇だったので息子もその姿をみて恋もさめ別れた。幾月か後、二人の子である男児が長者の所に捨てられていた。
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キツネ 1956年 宮城県 文化年間(1804~1818)のある秋の日,只野真葛の義弟沢口覚左衛門が雉打ちをするため犬を連れて山に入った。夕方近く犬が忍び鳴きを始めたので,新しい獲物を見つけたのだと思って銃を構え,見張っていると林から女が出てきた。女人の行き来する所でもないのにとあやしみながらうかがっていると,笹原を分け歩く足音も聞こえず,裾も動かず,すべるように近付いてくる。変化のものだと思いつつ,一応声を掛けてみたが蛙のような変な声で答えるだけであった。ふと7,8間ばかり傍の方を見ると,笹薮の中にちらりと狐の貌が見えたので,銃で撃つとギャッという叫びと共に女の姿も狐も消えてしまった。犬をかけようとしたが術をかけられたように眠りこけていた。起こして放してやったところ犬が異様な声でほえるので,駆けつけてみると犬より大きい牝の古狐が斃れていた。この辺には悪い狐が棲んで里人をたぶらかしていたが,その後は怪異も起こらなくなった。
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ヒヒ 1976年 新潟県 延宝か天和のはじめ、ある山家の老人が山から帰ってこなかったので、その妻がいぶかしがり、人に頼んで山を捜索してもらった。すると山奥に老人の笠とわらじが落ちていたので、それを怪しみ、村で山狩りをした。ところがなにもなかったので下山しようとすると、風が藪を吹くような音がしたので振り返ったところ、赤熊を被って目が星のように光る獣が襲ってきた。大力の若者が鎌で眉間に切りかかったが、若者を谷へ投げ落とした。残った者は逃げ帰り、越後公へ訴えた。そこで江戸より軍師を呼び、山狩りを行わせた。獣が現われたので、それを鉄砲で仕留めた。
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ダイジャ 1923年 京都府 ぼろぼろの着物を身につけ子供を抱いた女が家々の前に立ち、笛の音や琴の音をきいているといううわさが流れた。添田斎宮という立琴を弾く男は、それを聞いて昔契った大蛇のことを思い出し、方丈に相談した。それでほっとした斎宮は帰宅して思わず立琴をひいてしまい、女とともに行方不明になった。
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オオスギノセイレイ 1967年 福島県 笹木野の里の長者の娘に、毎晩しのんできた武士が、ある夜悲しそうに今夜限りと告げるので、娘は男のはかまのすそに長い糸を縫いつけた。あくる朝人を頼んで探してみると糸は近くの大杉の枝にかかっていた。神おろしをして聞いてみると、大杉の精霊が武士の姿になって娘のもとに通っていたのであった。精霊が今夜限りと告げたのは、福島藩主板倉公が一本の木で居室を作るための材木を探した結果、この笹木野の大杉に目をつけたからであった。大勢の人夫が苦心して切ったが、動かそうとしても次の日にはもとの場所に戻っている。古老が「精霊が通っていた女に音頭をとらせるとよい」と告げ、そのとおりにするとたちまち運び出すことができた。
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タイジャ 1959年 岡山県 宮谷川の淵に住む大蛇が赤部谷の娘の元に通っていたが、ひそかに袖に付けた糸を辿られ正体を見破られたという。阿哲郡大佐町、上房郡北房町宮地などでは忍んでくるのはすべて大山の赤松池の蛇の話になっている。
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タヌキ 1973年 鳥取県 吉川集落の奥山で、木挽きが大勢で小屋掛けして山仕事をしていたら、夜、小屋の上から女が覗いた。作州から来た木挽きが不審に思ってヨキを持って寝たら、次の夜、女が入ってきて1人1人顔を見ていく。一番奥に寝ていた作州の木挽きがヨキで斬りつけたら、跳んで逃げていった。仲間はみな、舌を抜かれて死んでいた。吉川の村人総出で血の跡をつけたらエナミ谷の岩穴に続いており、その穴をくすべたら、狸の毛の白くなったのが出てきた。その狸が人を殺していた。
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オオスギノセイレイ,ササヤキバシ 1967年 福島県 笹木野の里の長者の娘に、毎晩しのんできた武士が、ある夜悲しそうに今夜限りと告げるので、娘は男のはかまのすそに長い糸を縫いつけた。あくる朝人を頼んで探してみると糸は近くの大杉の枝にかかっていた。神おろしをして聞いてみると、大杉の精霊が武士の姿になって娘のもとに通っていたのであった。精霊が今夜限りと告げたのは、福島藩主板倉公が一本の木で居室を作るための材木を探した結果、この笹木野の大杉に目をつけたからであった。大勢の人夫が苦心して切ったが、動かそうとしても次の日にはもとの場所に戻っている。古老が「精霊が通っていた女に音頭をとらせるとよい」と告げ、そのとおりにするとたちまち運び出すことができた。大杉は板倉公の居室に使用され、余った材料は大仏となり、耳語橋の材料になった。耳語橋が夜中にささやくのはこのためだという。
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キツネ 1972年 岐阜県 昔、杉山氏が荷車に栗を積んで運んだ帰り道、名礼の近くで日が暮れたので垣根の竹を一本抜いて杖にし、車を引いていくと足が地につかないようになった。岩坂の下の林の近くまで来ると、道ばたに綺麗なお嫁さんがいた。こんなところにお嫁さんが居るはずがないと思い、足下を杖で叩くとキツネになって藪の中に逃げたという。
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ヤモリ 1974年 長野県 信濃国松代の山里に、有名な力自慢の者がいた。水無月の頃に彼は友人と山に入ったところ、きわめて大きな蛇が出てきた。そこで彼は上あごと下あごを持って口を裂こうとして失敗し、鎌で大蛇の口から喉にかけて切り裂いた。その体の太い所だけを家に持ち帰ると、親は大蛇は山の神に違いなく、必ず祟りが起こるといって家を追い出した。里長が何とか宥めた。彼の身体に蛇の匂いがついて抜けず、医者が薬を与えると消えた。その医者が言うには大蛇ではなく野守だという。彼はその後、山に入って官木を盗んだ罪で死刑になったが、野守の復讐だと思われた。
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