オンナノコエ,ユウレイ 1932年 熊本県 昔、肥後国の菊池川を船に米俵を積んで子ども連れの夫婦が下ってきた。その船が暴風雨で沈んだ。それ以後、この沖合いで小雨が降ると男女の声で「堀れ堀れ」と聞える。また、魚のよくとれる晩、帆をかけて進んでいた船がハタと止まり、人の姿が白く現われた。幽霊だったらしい。
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ユウレイ,オンナ 1982年 新潟県 夜ふけの渡し場で、川向うから女の声で、オウイ、オウイと呼ぶ声がした。船頭がいってみると、人影は見えない。乗るように促すと舟が重くなり、誰かが乗ったようだった。川を渡ってから降りるようにいうと、舟が軽くなったような気がした。船頭が、こんな夜ふけに舟を出させておいて、あいさつもなくというと、首に縄をぶら下げ、目の玉のとび出た、まっさおな顔した女が長い髪を前にたらした姿で現れ、菩提寺へ行くといって草むらへ消えた。
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オオスギノセイレイ,ササヤキバシ 1967年 福島県 笹木野の里の長者の娘に、毎晩しのんできた武士が、ある夜悲しそうに今夜限りと告げるので、娘は男のはかまのすそに長い糸を縫いつけた。あくる朝人を頼んで探してみると糸は近くの大杉の枝にかかっていた。神おろしをして聞いてみると、大杉の精霊が武士の姿になって娘のもとに通っていたのであった。精霊が今夜限りと告げたのは、福島藩主板倉公が一本の木で居室を作るための材木を探した結果、この笹木野の大杉に目をつけたからであった。大勢の人夫が苦心して切ったが、動かそうとしても次の日にはもとの場所に戻っている。古老が「精霊が通っていた女に音頭をとらせるとよい」と告げ、そのとおりにするとたちまち運び出すことができた。大杉は板倉公の居室に使用され、余った材料は大仏となり、耳語橋の材料になった。耳語橋が夜中にささやくのはこのためだという。
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カッパガミサマノミタラシイケ 1956年 宮城県 磯良神社,通称河童神様の御手洗池はどんな日照続きでも水の涸れることがなく,それが用水堀に続いていた。昔,近所の安彦甚之丞という者が,ある夏仲間と二人で用水堀をくぐって泳ぎ回っているといつのまにか水底から水の無い所に出た。そこには立派な家があり,窓から覗くと美しい娘が機織をしていた。「ここは人間の来る所ではない。早く帰りなさい。」「ここに来た事を三年経たぬうちは人に語るな。語れば必ず禍がある。」と言われたので,夢中で逃げ出すと何時の間にか元の用水堀に出ていた。一人はつい口を滑らせてしまい,原因不明の高熱で急死してしまったが,甚之丞はなかなか話さなかった。
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カッパ,ヤマウバ 1984年 福島県 深い水の中には「河童」がいてチンチン取られるし、山の中には山姥がいるから、水浴びと山には1人でいってはいけないと言われる。今でも山へは1人で行くのはいやだし、腰には鈴をつけないと歩けない。
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フネ,コエ,レイコン 1970年 神奈川県 南風で波が高く、大雨が降っているとき、夜に声や和船の音が聞えてくることがある。猟師にしか聞えないのかもしれないと言われる。帰れ帰れと霊魂が知らせているのだという。
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ユウレイ 1990年 長野県 恨みを晴らすために、幽霊になって出てくるという。白い着物を着て、足がなく、青白い痩せ顔で出る。夜に柳の木の下に出たり、峠の頂上や海の中に出るという。
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フナユウレイ 1978年 高知県 舟幽霊は舟と共に水死して成仏できない人々であり、雨の日に現れることが多く、これに憑かれると急に船が動かなくなったり、行く手に島や礁の錯覚が見えたりするのだという。いずれの場合も「杓子を貸せ」と言われるという伝承が付随しており、これには杓子の底を抜いて渡すものだとされている。また、櫓綱の穴から覗くと正体が見えるとか、その穴から灰を落としてやると消えるとか、「わしは土左衛門だぞ」と仲間であることを告げると消えるなどとも言われている。
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オンナノユウレイ 1931年 大阪府 明治以前の事、不縁となって実家に戻った娘が、煩悶した挙句入水自殺を遂げた。以来、夜暗くなると、身投げした浜から女の幽霊が出没するという。そればかりでなく、姑を呪う声まで聞こえるそうで、見物客や商店が出るほど盛況になったことがあるという。
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ガワッパ,カワンタロウ,ヤマンタロウ 1970年 熊本県 里之城の段丘直下には求磨側の瀬があり、水利の便が悪く水死人が度々出た。そのため地蔵が祀られている。又夏期には子供の水死事故がたびたびあった。水死の原因に関しては、ガワッパに引かれるためという。ガワッパは指を6本持ち、姿は人間で、頭に皿を載せている。旧2月1日に山から出てきて、秋の彼岸に「ホイ、ホイ」と鳴き山へ帰る。山にいる時分をヤマンタロウといい、川にいる時分をカワンタロウという。
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タヌキ 1975年 静岡県 「妻良の七坂・子浦の八坂。会いに来たもの帰さるか」といい、そこには狸のくぼがある。狸が人を化かし、女の人や地蔵に化けたりするが、大きい声を立てると消える。
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ソコユーレイ 1933年 長崎県 平島では船幽霊をソコユーレイと呼び、船につくと船は少しも動かなくなる。万灯のような灯をつけて幽霊汽船が来る際、人の声だけがして汽船の走る音は聞こえないという。また、江島の船が、天気が崩れたので帰ろうとすると、裸でヤアヤアと言いながら6人が泳いできて船にかじりつき、船が動かなくなったという。追い払っても再び泳いできたという。
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バケモノ,モンスケババア 1996年 岩手県 おとめ沢に昔化物がいて、夜な夜な人を捕らえる。おとめという女もその化物にとらわれ姿を消し、おとめ山に留まって門助というものの妻となったが、故郷が忘れがたく、暴風雨の暗夜に常に里にあらわれた。以来、暴風雨の夜は「門助ばばあ来る」とおそれた。
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カワウソ,カワソ 1985年 愛媛県 大洲市三の丸を通ってお城へ行く時、お堀の土手にかわうそがいて、蛙のように水の中に飛びこんだという。また家の塀の上に女のような顔が出ていたのを見た人もあったという。またある道場で、合宿中に外で音がしたり、声がしたという。朝にはびんづけが無くなっている。かわうその仕業だという。
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〔ジョウゲンチュウ〕,オキクムシ 1974年 滋賀県 近江国志賀郡別保の里に常元やしきと俗称される家があり、ここに居る者は必ず禍があるという。その故を尋ねると、蒲生家の侍だった南蛇井源太左衛門なる無頼が諸国で悪行を重ね、生まれ故郷の別保に帰って剃髪して常元と称した。慶長5年に以前の罪で捕縛された常元は、その家の柿の木に縛られて最後には斬られた、しかしその骸を木の根本に埋めたところ、数日後、顔や目口鼻がある人を縛っている姿に似た妖しい虫が、毎年多く墳上に現れて、蝶に化けて消えたという。人々はこれを常元虫といった。
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キツネ 1966年 山形県 昔、徳兵衛という人が集まりに出かけ、飲めや歌えの大騒ぎをした。帰り道、日当という場所付近で、酒の席にもいた二人の女中が追いかけてきた。徳兵衛は路上で女中と再び酒を飲み、眠った。苦しくて目が覚めると松の根元に寝ていた。家に帰り着いたが体は死んだように重かった。徳兵衛の持つ折箱の中身を狙って日当の狐が化けて現れたのだという。
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ボウレイセン 1956年 宮城県 夜の航海中、船の針路に突然他の船が現れ、停船すると船影が消える。これは海上遭難者の亡霊だという。また、靄のなかに掛け声と櫓(櫂の意味か?)の音だけが聞こえるという。これも亡霊によるものだとして普段信仰する神々に祈るという。
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キツネ 1973年 岩手県 ある人が魚を買った帰り、よく狐が騙す峠に通りかかると、昼なのに暗くなり、家の灯が見えた。そこへ提灯を借りにいくといくとお婆さんがいて、うちには提灯がないから隣に行って借りてきてあげる、と言って出て行ってしまった。その人が留守番をしていると、奥座敷から唸り声がする。怖くて飛び出すと水の中にはめられていて、魚を盗まれていた。
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キンノニワトリ 1968年 鳥取県 昔上司南条という殿様が尼子晴久に攻められ、この地に逃げてきた。城の宝物である金の鶏を持っていたが、追っ手の追及が激しく、熊谷という谷川の滝壷に金の鶏を投げ込んだ。この渕を鶏渕または丸渕と呼ぶ。この金の鶏は今も渕の底に沈んでおり、毎年大晦日の夜高く鳴いて新年を告げると言う。鶏渕に石を投げ込むと雨が降るという。
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オヒメバシ,オンリョウ 2003年 山梨県 公会堂のある所をおひめ屋敷といわれ、近くにある橋をおひめ橋とよぶ。おひめの怨霊が病などの災いをもたらすといわれる。橋から落ちたら、おひめにつかまえられて片袖をひきとられるといわれる。おひめが所有していた田んぼをおひめ田といい、その田を耕すと災いにあうといわれていた。天保年間に生きていたおひめは美貌であり、やがて不倫し、夫を殺したが、市川代官所に知られ、磔に処罰されたといわれる。
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