■研究活動 共同研究 2015年度

21世紀10年代日本文化の軌道修正:過去の検証と将来への提言

領域 第4研究域 文化関係

 日本文化のみならず日本文明は、すでにここ20年にわたり、おおきな軌道修正を迫られてきた。ところが、専門分野に過度に集中した学術領域は、こうした課題に対応できていない。東北大震災以降の状況によって露呈したこの現実を前にして、抜本的な軌道修正を構想するための研究会(準備会)を企画し、今後の共同利用研究機関としての共同研究の可能性を含めて、議論を進め、提言をまとめたい。

1 .まず、現在の研究体制にたいする問い直しを提唱したい。そこには3つの課題があろう。
 1 -1.いままでの学術、日本文化研究のありかたが問われねばならない。はたして20世紀日本が後世にのこすべき《文化遺産》とは何か?を、産業技術博物館構想が挫折した時点で、問い直したい。
 1 -2.つづいて、日本文化の対外的発信の問い直しも火急な課題だろう。戦時下における《対外文化工作》への反省から、今後の国際文化交流の将来への展望を模索する機会を設けたい。
 1 -3.さらに、学術を支える文化環境の再設定が、必要だろう。産・官・学協同による学術研究の相互乗り入れについて、日本の社会構造はいちじるしく硬直しており、韓国や中国をふくむ諸外国と比較しても、さまざまな制度的制約が、抜本的な刷新を阻害している。将来像を模索したい。

2 .つぎに、日本の学術の世界の内部でも、いままでの知の継承が危機に瀕している。
  学者社会はどこにゆこうとしているのか。既存の学会組織は、後継者養成やポストの刷新に円滑を欠き、留学生への対応にも不適応を呈して、自己再生能力を喪失しつつある。学会再編成への構想も必要とされているのではないか。世界との連携、共同事業の推進にむけた青写真作りが必要となるだろう。

3.この問題は、さらには日本文化の将来像の再構築に結びつく。
 3 -1.大量生産・大量消費モデルの限界は、この20年ほど顕著になってきたが、軌道修正はなされていない。まずリサイクルの思想と実践を問い直し、将来へのビジネス・モデルの提起を含めた、社会再構築にむけて、いま学術に何が要請されているのか、問い直したい。
 3 -2.それとの関連で、《もの》に触れる思考の復権を提唱したい。これは頭脳中心主義の異常肥大からの脱却にむけて、あらたな学術姿勢、研究の再定義をも含む提言をめざすこととなる。

4 .これらをうけて、具体的に日本文化の軌道修正を考える場合に、いくつかの話題を設定したい。
 4 -1.「《ガラパゴス》はどこへゆく:日本型孤立文化の進化に将来はあるか?」
 4 -2.「《島嶼性文化》の特質と課題:日本列島文化史の将来構想にむけて」
 4 -3.「海洋史観の再検討:海賊行為と公権力」
といった設定は、島国としての日本の世界における文化的・文明史的位置の問い直しを促進する。

 参加者からの具体的提案に即し、毎回独立性のある話題をとりあげ、集中審議を行う予定である。
(以下の研究組織は2015年10月1日現在のものです)

研究代表者 稲賀 繁美 国際日本文化研究センター・教授
幹事 牛村 圭 国際日本文化研究センター・教授
共同研究員 鵜戸 聡 鹿児島大学法文学部人文学科・准教授
大西 宏志 京都造形芸術大学・教授
岡本 光博 成安造形大学美術領域現代アートコース・非常勤講師
小川 さやか 立命館大学大学院先端総合学術研究科・准教授
小倉 紀蔵 京都大学大学院人間・環境学研究科・教授
鞍田 崇 明治大学理工学部・准教授
クリストフ・マルケ 日仏会館・フランス国立日本研究センター・所長
呉 孟晋 京都国立博物館学芸部列品管理室・研究員
小崎 哲哉 京都造形芸術大学・客員教授 / (有)小崎哲哉事務所・編集者・美術ジャ-ナリスト
菰田 真介 明光義塾田原教室・講師
近藤 高弘  美術作家
澤田 敬司 早稲田大学法学学術院・教授
白石 嘉治 東洋大学・非常勤講師
全 美星 同志社大学グローバル地域文化学部・准教授
戦 暁梅 東京工業大学外国語研究教育センター・准教授
滝澤 修身 長崎純心大学人文学部・教授
多田 伊織 京都大学人文科学研究所・非常勤講師
千葉 慶 明治大学・非常勤講師
テレングト・アイトル 北海学園大学人文学部・教授
西田 雅嗣 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科・准教授
西原 大輔 広島大学大学院教育学研究科・教授
二村 淳子 東京大学大学院総合文化研究科・博士後期課程
波嵯栄 ジェニファ しょう子 日仏会館フランス事務所フランス外務省・国立科学研究センター在外共同研究所UMIFRE19・研究員
橋本 順光 大阪大学大学院文学研究科・准教授
範 麗雅 読売日本テレビ文化センター講座本部・非常勤中国語講師
平芳 幸浩 京都工芸繊維大学美術工芸資料館・准教授
平松 秀樹 大阪大学外国語学部・非常勤講師
Brosseau Sylvie 早稲田大学政治経済学術院・教授
藤原 貞朗 茨城大学人文学部・教授
三原 芳秋 一橋大学大学院言語社会研究科・准教授
松原 知生 西南学院大学国際文化学部・教授
本浜 秀彦 文教大学国際学部・教授
山中 由里子 国立民族学博物館民族文化研究部・准教授
山本 麻友美 京都芸術センター・プログラム・ディレクター
Larking Matthew 同志社大学グローバル地域文化学部・助教
李 建志 関西学院大学社会学部・教授
中村 和恵 明治大学法学部・教授
張 競 明治大学国際日本学部・教授
加治屋 健司 京都市立芸術大学芸術資源研究センター・准教授
今泉 宜子 国際日本文化研究センター・客員准教授 / 明治神宮国際神道文化研究所・主任研究員
林 洋子 国際日本文化研究センター・客員准教授 / 文化庁芸術文化課・芸術文化調査官
山田 奨治 国際日本文化研究センター・教授
劉 建輝 国際日本文化研究センター・教授
磯前 順一 国際日本文化研究センター・教授
榎本 渉 国際日本文化研究センター・准教授
フレデリック・クレインス 国際日本文化研究センター・准教授
森 洋久 国際日本文化研究センター・准教授
朴 美貞 国際日本文化研究センター・プロジェクト研究員
長門 洋平 国際日本文化研究センター・技術補佐員
海外共同研究員 大橋 良介 日独文化研究所・所長
Dennitza GABRAKOVA City University of Hong Kong・助理教授
王 成 清華大学外国言語文学学部・教授