■研究活動 共同研究 2014年度

戦争と鎮魂

領域 第1研究域 動態研究

 人類の歴史は、戦争の歴史でもある。氏族、部族、国家、あるいは複数国からなる連合・連盟といったさまざまな集団が、あるときは己の利益を追い求め、ときには自集団の名誉を守るため、他者との戦いを繰り広げてきた。敵対する相手と面と向かっての格闘から、銃などの兵器を用いての戦闘、さらには戦車や軍艦、戦闘機、そして核兵器へと武器や戦術は変化を遂げていったものの、戦争の不可避の結果として、勝者と敗者を問わず、戦いの過程では多数の死傷者が生まれてきた。また、戦乱に巻き込まれた非戦闘員が命を落とすことも、稀ではなかった。
 先人たちは、戦い終えてのち、戦争で落命した者へいかように対処してきたのだろうか。補償という現実的な問題とは別に、戦死者の魂を鎮めるためのさまざまな行為も、時代や地域を異にしても、古くよりあったものと思われる。そういう古今東西の鎮魂の営みには、顧みて普遍性も見られるであろうし、一方、特殊性も看取されることであろう。
 本共同研究は、歴史学、宗教学、政治学、文化人類学、文学、社会学等々の、参加者の専攻分野を背景にした、古今東西にわたる重厚な学際的事例研究の報告と、それへの議論の積み重ねから成り立つ形で進行する。昨今の日本では、さきの大戦の戦死者の鎮魂をめぐる議論が政治問題化することが多く、鎮魂の原義が忘却されているようにさえ思われることが少なくない。本共同研究の展開が、日本の戦争、そして鎮魂の理解の深化にも寄与するような、純粋な学問の集いとなることを念じている。
(以下の研究組織は2014年10月1日現在のものです)

研究代表者 牛村 圭 国際日本文化研究センター・教授
幹事 ジョン・ブリーン 国際日本文化研究センター・教授
共同研究員 今泉宜子 明治神宮国際神道文化研究所・主任研究員
岩崎 徹 横浜市立大学国際総合科学部・准教授
大東和重 関西学院大学法学部・教授
加藤めぐみ 明星大学人文学部・教授
川村覚文 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部附属共生のための国際哲学研究センター(UTCP)・特任助教
川本玲子 一橋大学大学院商学研究科・准教授
金 志映 東京大学大学院総合文化研究科・博士後期課程
古田島洋介 明星大学人文学部・教授
小堀馨子 成城大学・非常勤講師
佐伯順子 同志社大学社会学部・教授
竹村民郎 元大阪産業大学教授
等松春夫 防衛大学校・教授
永井久美子 東京大学大学院総合文化研究科・助教
西原大輔 広島大学大学院教育学研究科・教授
眞嶋亜有 国際基督教大学アジア文化研究所・非常勤研究員 / ハーバード大学ライシャワー日本研究所・非常勤アソシエイト
吉井文美 東京大学大学院人文社会系研究科・博士後期課程
吉田(古川)優貴 明治学院大学社会学部付属研究所・非常勤研究調査員
磯前順一 国際日本文化研究センター・准教授
稲賀繁美 国際日本文化研究センター・教授
郭 南燕 国際日本文化研究センター・准教授
倉本一宏 国際日本文化研究センター・教授
末木文美士 国際日本文化研究センター・教授
松田利彦 国際日本文化研究センター・教授
劉 建輝 国際日本文化研究センター・教授
海外共同研究員 徐 載坤 韓国外国語大学校・教授
平松隆円 スアンスナンタ・ラチャパット大学・専任講師
堀 まどか 嶺南大学校文科大学・国際講師