■研究活動 共同研究 2013年度

近代日本における指導者像と指導者論

領域 第三研究域 文化比較

 指導者とはどうあるべきか。指導者に期待される役割とは何か。そうした役割を果たすべき指導者に必要とされる資質とはどんなものか。そのような資質を備えた指導者を、どのようにしたら育てることができるのか。このような問いは、古くから多くの人によって投げかけられ、様々の答えが示された。その問いかけと、答えの出し方は、その国の政治文化の重要な部分を構成するといってよい。
 この共同研究では、幕末維新期から現代までを射程に収め、近代以降の日本人が、どのような指導者像を描き、いかなる指導者論を語ってきたかを考察し、その考察を通して日本の政治文化の重要な一面を明らかにしたい。政治文化といっても、政治指導者に関わるイメージや言説だけを対象とするのではない。政治の世界だけでなく、官界、経済界、メディア界、文芸界などにも視野を広げ、分野によって指導者のあり方に変化があるのかどうか、また同じ分野でも時代によって変化したのかどうか、を検討する。
 この共同研究を通して、例えば、次のような問題の解明が試みられるだろう。1930年代に日本の政治は「下剋上」と呼ばれる悪弊に煩わされ、意思決定の分裂症状が発現したが、なぜそのような現象が生じたのか。この原因は政治権力の構造分析からだけでなく、指導者のあり方をめぐるイメージや意識の面からも、明らかにできるところがある。また、指導者不在と言われる時代については、どのような意味での指導者が不在であると考えられたのか、そのとき指導者に期待された役割、能力、資質はどのようなものであったのか、といった問題と取り組むことが必要となろう。
 共同研究では、個々の研究対象やアプローチは研究者個人の選択に委ねられる。ある特定の時期の、あるいは特定の分野の、指導者をめぐる言説を取り上げる研究もあるだろうし、特定の指導者個人ないし指導者群を取り上げ、彼らの指導者として自己イメージを考察する研究もあるだろう。共同研究全体を通して、指導者のあり方について近代日本の全般に共通する特徴を導き出すことを追求したい。
(以下の研究組織は2013年4月1日現在のものです)

研究代表者 戸部良一 国際日本文化研究センター・教授
幹事 瀧井一博  国際日本文化研究センター・教授
共同研究員 五百旗頭薫 東京大学社会科学研究所・准教授
猪木武徳 青山学院大学国際政治経済学研究科・特任教授
小川原正道 慶應義塾大学法学部・准教授
河野 仁 防衛大学校人文社会科学群公共政策学科・教授
黒澤文貴 東京女子大学現代教養学部 ・教授
佐古 丞 大阪学院大学国際学部・教授
佐藤卓己 京都大学大学院教育学研究科・准教授
庄司潤一郎 防衛省防衛研究所・戦史研究センター長
武田知己 大東文化大学法学部・教授
中西 寛 京都大学大学院法学研究科・教授
野中郁次郎 一橋大学名誉教授
波多野澄雄 筑波大学名誉教授
牛村 圭 国際日本文化研究センター・教授
松田利彦 国際日本文化研究センター・教授
楠 綾子 国際日本文化研究センター/関西学院大学国際学部・客員准教授/准教授
奈良岡聡智 国際日本文化研究センター/京都大学大学院法学研究科・客員准教授/准教授
海外共同研究員 黄 自進 台湾中央研究院近代史研究所(台湾)・研究員
Frederick R.Dickinson Department of History, University of Pensylvania(アメリカ合衆国)・Associate Professor