■研究活動 共同研究 2012年度
仕掛けと概念:空間と時間の日仏比較建築論
領域 第三研究域 文化比較
本研究は、日本とフランスとの比較に基軸をおき、空間を構成する仕掛けや道具立てに関する観念の分析を目的とする。これらふたつの空間文化を対立させるのは今日もはや不毛である。不可欠かつ可能なのは、こうした空間性の「核」を見定めることであり、それらを自己言及的な説明から開放し、共有可能なものへと操作してゆくことが大切である。 この作業の導きとなるのは、注がれる視線の複数性を考慮にいれ、そこから明らかになる本質的な差異に注目することだ。参加する研究者は、空間におけるひとつの要素(観念なり、コンセプトなり、紋章となる仕掛けなど)をいかに自らの言語で解釈するかを各自表明する。こうした厳密な作業に立脚しつつ、またそれぞれの文化に固有な抽象化の特性にも気配りしながら、本研究班は、分析される基本概念にみられる違いのみならず、それらを研究する科学的なアプローチにおける方法論そのものの分岐を、議論の対象としてゆくことになる。ここで日仏に二極化して準備された発言はとりわけ歓迎される。 住まうこと、さらには空間性について、日仏との認識論的・概念的な差異に注目するには、歴史的な厚みを見込んで研究し、同時に将来にむけていかに実現してゆくかを見極めることとなる。研究発表では、対象となる空間概念の初出状況を歴史的に辿り直し、その語源を確認するとともに、それが後世いかに展開したか、いかなる空間や建築においてもっとも顕著な事例を提起しているのか、地理・歴史を含めて視覚的に確かめ、その現状さらには将来を探ることとなる。 交叉する視線とは、単純な比較万能でもなければ、晦渋な混濁や文化の翻訳不可能性への退却でもない。このため日仏でかならずしも等価性のない用語をめぐって、両言語並用の研究が要請される。ふたつの言語は意思疎通の媒体であるのみならず、その内部から新たな概念を生み出すための道具となる。真実は単一でもなければ白濁したものでもない。日仏のおのおのの研究者の辿ってきた知的背景に反省を加え、両者の思考方式の違いそのものを受け入れ、それに注目することが、肝要となる。 (仏文計画書より抄訳: 稲賀繁美教授)
研究代表者 | BONNIN Philippe | 国際日本文化研究センター・外国人研究員 |
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幹事 | 稲賀 繁美 | 国際日本文化研究センター・教授 |
共同研究員 | ASANUMA-BRICE Cécile | フランス外務省・国立科学研究センター 在外共同研究所UMIFRE19・博士課程 |
〃 | 阿部 順子 | 椙山女子学園大学生活科学部・准教授 |
〃 | 江口 久美 | 東京大学先端科学技術研究センター・客員研究員 |
〃 | 加藤 邦男 | (財)建築研究協会・理事長 |
〃 | JACQUET Benoît | フランス極東学院・准教授 |
〃 | 千代 章一郎 | 広島大学大学院工学研究院・准教授 |
〃 | TARDITS Manuel | ICSカレッジオブアーツ・副校長 |
〃 | 田路 貴浩 | 京都大学大学院工学研究科・准教授 |
〃 | 土居 義岳 | 九州大学大学院芸術工学研究院・教授 |
〃 | 西田 雅嗣 | 京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科・准教授 |
〃 | 波嵯栄 ジェニファ しょう子 | 日仏会館フランス事務所フランス外務省・国立科学研究センター 在外共同研究所UMIFRE19・研究員 |
〃 | BROSSEAU Sylvie | 早稲田大学政治経済学部・教授 |
〃 | VENDREDI-AUZANNEAU Christine | 慶應義塾大学・教授 |
〃 | PEZEU-MASSABUAU Jacques | 元奥羽大学文学部教授 |
〃 | 松原 康介 | 筑波大学システム情報工学研究科・助教 |
〃 | 松本 裕 | 大阪産業大学デザイン工学部・准教授 |
〃 | 三宅 理一 | 藤女子大学人間生活学部・教授 |
〃 | 渡邊 一正 | NPO市民文化財ネットワーク鳥取・理事長 |
〃 | 朴 美貞 | 国際日本文化研究センター・機関研究員 |
海外共同研究員 | BOURDIER Marc | パリ・ラヴィレット国立高等建築学校・教授 |
〃 | FIEVE Nicolas | フランス国立高等研究院・教授 |
〃 | Corinne TIRY-ONO | リール国立高等建築学校(Architecte,researching,ENSAPL)・文化省研究技官 |