■研究活動 共同研究 2011年度

帝国と高等教育-東アジアの文脈

領域 第四研究域 文化関係

本研究は、日本の植民地大学の制度・機能・遺産を、東アジア史の文脈を踏まえながら解明するものである。植民地における高等教育機関については、これまで散発的な言及はなされてきたものの、纏まった本格的研究はほとんどない。先行研究としては、教育史からの研究として馬越徹の『韓国近代大学の成立と展開』(名古屋大学出版会、1995)があり、「日本型植民地大学」の典型例として、京城帝大を、日本統治下における「朝鮮民立大学」設置運動などと比較しながら検討しているが、朝鮮・韓国の事例に限定されており、より広い帝国研究の文脈での位置づけは未解決のままになっている。また、戦前期日本の諸学問における帝国的認識空間の位相を広く扱ったものとして『岩波講座・「帝国」日本の学知』全8巻(岩波書店、2006)があるが、同講座は「学知」の文脈的理解に焦点が置かれているため、植民地高等教育機関に関する体系的な考察とはいえない。本研究は、歴史的評価の難しい日本の植民地高等教育機関に関する初の本格的国際共同研究である。 本研究は、以下の3部から構成される。「第1部 植民地大学の制度と理念」では、植民地高等教育機関の制度とそれを支えた理念を欧米の事例との比較をまじえつつ考察する。「第2部 植民地大学の学知と機能」では、植民統治構造における植民地大学の位置づけを分析したうえで、人文・社会・自然科学が帝国的認識空間のなかで果たした機能について解明する「第3部 植民地大学の遺産」は、第二次大戦終結後の韓国・台湾における高等教育機関への影響や、技術移転・文化蝕変など地域形成に関わる知的インフラの形成に与えた影響を考察する  上記の研究目的を達成するために、年6回の研究会を行う。また、研究成果については、名古屋大学出版会から上梓することの内諾を得ており、編集協力もいただいている。

研究代表者 酒井 哲哉 国際日本文化研究センター・客員教授 / 東京大学大学院総合文化研究科・教授
幹事 松田 利彦 国際日本文化研究センター・准教授
共同研究員 浅野 豊美 中京大学国際教養学部・教授
飯島 渉 青山学院大学文学部・教授
石川 健治 東京大学大学院法学政治学研究科・教授
石川 裕之 畿央大学教育学部・助教
片岡 龍 東北大学大学院文学研究科・准教授
川尻 文彦 愛知県立大学外国語学部中国学科・准教授
通堂 あゆみ 東京大学大学院人文社会系研究科韓国朝鮮文化研究室・調査員
中生 勝美 桜美林大学人文学系・教授
松田 吉郎 兵庫教育大学学校教育研究科・教授
米谷 匡史 東京外国語大学大学院総合国際学研究院・准教授
馬越 徹 名古屋大学名誉教授
瀧井 一博 国際日本文化研究センター・准教授
海外共同研究員 呉 密察 国立成功大学台湾文学系・教授
白 永瑞 延世大学校歴史学科・教授
金 昌祿 慶北大学校法学専門大学院・教授
崔 鍾庫 ソウル大学校法科大学院・教授
劉 書彦 清雲科技大学応用外国語学科・助理教授