■研究活動 共同研究 2005年度

近代東アジアにおける二字熟語概念の成立に関する総合的研究

日本と中国はそれぞれ東アジア漢字文化圏の一員として、ともに近代以降の「西学東漸」の波に遭遇し、その言語構造や表現体系などにおいて深刻な変化を経験した。近代西洋の諸概念を翻訳し、いわゆる二字熟語を大量に創出したのもその激しい変化の表れの一つである。  そしてその創出はほかならぬ日中の間を往還しつつ、両者の「共同」作業によってはじめて実現されたのだ。一六世紀末から一九世紀半ばにかけて、中国に来たカトリックやプロテスタントの宣教師たちが中国の知識人と協力して多くの西洋諸概念と対応する新しい言葉を造った。それが日本に伝わり、一部の修正を経ながらいわゆる蘭学や洋学の用語として採用された。その後、とりわけ一九世紀末期に入ると、今度は日清敗戦に伴う日本への留学ブームや日本語書籍の翻訳ブームが起こり、日本の幕末明治期に作られた新しい二字熟語概念が次々と中国に伝えられ、その近代西洋受容に大きな役割を果たした。本共同研究は、以上の史実を踏まえ、近代二字熟語概念の伝統中国語との淵源関係、その四世紀にわたる成立事情などを考察し、その存在がいかに東アジアという大きな言語空間の中で生まれ、またそれがいかにこの地域の「近代」ないしは「近代文化」の成立に多大な影響を及ぼしたかを解明しようとするものである。

代表者 馮 天瑜 武漢大学中国伝統文化研究センター国際日本文化研究センター・主任・教授 外国人研究員
幹事 劉 建輝 国際日本文化研究センター研究部・助教授
班員 荒川 清秀 愛知大学国際コミュニケーション学部・教授
井上  健 東京工業大学外国語研究教育センター・教授
緒方  康 神戸大学大学院文化学研究科・助教授
官  文娜 大阪外国語大学・非常勤講師
榊原 貴教 ナダ出版センター・代表取締役
史  有為 明海大学大学院応用言語学研究科・教授
沈  国威 関西大学外国語教育研究機構・教授
陳  力衛 目白大学人文学部・教授
鄧   紅 大分県立芸術文化短期大学・助教授
鄧  新華 GIS中部株式会社・社員
飛田 良文 明海大学外国語学部・客員教授
松井 利彦 神戸松蔭女子学院大学文学部・教授
松田  清 京都大学大学院人間・環境学研究科・教授
李  済倉 龍谷大学仏教文化研究所・客員研究員
劉  柏林 愛知大学現代中国学部・・助教授
柳父  章 桃山学院大学文学部・非常勤講師
秦  兆雄 神戸外国語大学中国学科・助教授
鈴木 広光 奈良女子大学文学部・助教授
戦  暁梅 東京工業大学外国語研究教育センター・助教授
孫   江 静岡文化芸術大学文化政策学部・助教授
湯浅 茂雄 実践女子大学文学部・教授
鈴木 貞美 国際日本文化研究センター研究部・教授