■研究活動 共同研究 1999年度

武器の進化・退化の学際的研究(考古・歴史編)

武器は、社会的・政治的状況の変化とともに、改良され進化することもあれば、等閑に付され、退化することもある。また、逆に武器の改良が社会の変化に決定的な影響を与えることもある。しかし、これまでこうした認識は、とくに吟味を受けることもないまま、漠然とした常識のレベルに留まっていた。  たしかに、鉄砲や大砲の出現がドラマスティックに社会を変化させた、というような「革命的」事象については、改めて学問的吟味を加える必要もなかろう。しかし、特定の武器の微妙な変化(例えばヤジリの材料や形態の変化)が、具体的にどの程度の武力向上を意味し、それがどのような社会的インパクトを与えたか、といった細密な問題となると、事は単純ではない。さらに、社会的・政治的与件の変化と、それが要請する武器の改良・新武器の開発との相関関係というような問題となると、一層慎重な学問的分析を必要とするであろう。否、率直にいって、そもそもこれまで歴史学、考古学、民族学等々、社会科学は、武器の社会的・政治的インパクトについて云々しながら、肝心の武器そのものの物理的能力を科学的に測定したことが、どれだけあるだろうか。憶測が全くなかった、と言い切れるだろうか。 本研究は、この点に思いをいたし、工学研究者と社会科学者との共同作業により、さまざまな武器の進化・退化と人間社会のあり方の相互規定関係について、本格的に科学のメスを入れようとするものである。  今回は、さしあたり、対象をいくつかの考古学的・歴史学的事例に即してケーススタディーを行い、方法論の確立と在来の歴史学・考古学的学説の検証を目標とする。

代表者 石井 紫郎 国際日本文化研究センター研究部・教授
幹事 赤澤  威 国際日本文化研究センター研究部・教授
班員 青柳 正規 東京大学大学院人文社会系研究科・教授
木村 文彦 東京大学大学院工学系研究科・教授
佐々木憲一 明治大学文学部・講師
佐藤 慎一 東京大学大学院人文社会系研究科・教授
中島 尚正 東京大学大学院工学系研究科・教授
野林 厚志 国立民族学博物館民俗社会研究部・助手
細谷  聡 信州大学繊維学部・助手
松木 武彦 岡山大学文学部・助教授
松本 岩雄 島根県埋蔵文化財調査センター・調査課長
吉川 弘之 放送大学・学長
井波 律子 国際日本文化研究センター研究部・教授
宇野 隆夫 国際日本文化研究センター研究部・教授
山田 奨治 国際日本文化研究センター研究部・助教授
渡邉 雅子  国際日本文化研究センター海外研究交流室・助教授