■イベント 日文研フォーラム

2014年9月16日 第281回    日文研フォーラム

概要
 後藤新平の台湾経営の理念は「生物学的植民地論」として知られています。日本の慣行、組織、制度を台湾のそれに適応するよう工夫しながら植民地経営を行うというもので、武断型の植民地支配とは一線を画する経営思想でした。台湾に古くから存在している慣行制度を研究し、「旧慣」に見合うような制度的工夫をしなければ、優れた台湾経営など不可能だという思想の持ち主が後藤でした。
 日露戦争後、後藤は「満州経営梗概」を日本政府向けに提出し、「満州鉄道庁」の設立を提唱しました。「満鉄」の萌芽です。1906年、台湾総督府民政長官を辞め、満鉄総裁となった後藤は、多数の台湾旧慣調査経験者を連れて中国東北部の満州に入り、旧慣調査の理念、方法を同地に持ち込みました。その活動はさらに、華北地方や中国内陸部にまで及びました。結果として、満鉄は鉄道経営にとどまらない巨大な総合コンツェルンとなり、中国における日本植民地機関の優等生となったのです。
 私はこれまでの研究から、後藤が大金を投じて遂行した旧慣調査事業は、彼自身の意図とも必ずしも関係のないところで、この世に膨大な学術的遺産を残したという事実を確認させられてきました。後藤の台湾および満州経営の理念が生んだ、いわば植民地遺産を、プラスとマイナスの両側面において捉え、プラスと思われる部分もいったん客観化、対象化の手続きを経て、あくまで現代を生きる一「方法」として活用してゆかなければならないと考えています。本講演では、その成果の一端をお話しします。
発表者
『後藤新平研究――中国の視点から』
王 鍵   中国社会科学院 近代史研究所  研究員   /国際日本文化研究センター  外国人研究員
コメンテーター
劉 建輝   国際日本文化研究センター  教授   
司会
佐野 真由子   国際日本文化研究センター  准教授   
場所:
ハートピア京都 3階大会議室 京都市中京区竹屋町通烏丸東入る清水町375
開場時間:
13:40
開始時間:
14:00
終了時間:
16:00
申込み:
不要
受講料 :
無料
定員:
先着180名