■トピックス  2020年

2020-01-23 日文研の話題

[Evening Seminarリポート]「文明開化」を広めた明治の戯作と大衆文化(2019年12月5日)

 12月5日、アリステア・スウェール外国人研究員(カンタベリー大学准教授)を講師に迎え、英語によるイブニングセミナーが開催されました。
 
 明治史、とくに大衆文化史を専門とするスウェール研究員は今年度、日文研における共同研究「大衆文化と文明開化:幕末から明治への激動期における大衆メディアの位置及び役割」を主宰しています。“Expanding the Notion of ‘Civilization and Enlightment’: The Role of Popular Literature and Art in the Early Meiji Period”(「文明開化」という概念の広がり――明治初期における大衆文学と芸術の役割)と題した今回のセミナーでも、その研究成果の一端が披露されました。
 
 「文明開化」については従来、森有礼や福澤諭吉、加藤弘之、中村正直、西周ら、旧幕府官僚と学識者によるメンバーが明治初期に結成した啓蒙学術団体「明六社」などの活動を中心に語られがちでした。けれども発表では、“ねこも杓子も文明開化”と巷で謳われたとおり、多くの絵師や文筆家が関わった「戯作」の大衆メディアとしての影響力に焦点が当てられました。

 とくに明治初期に発行された絵入り新聞や雑誌、錦絵新聞に見える多くの事例を紹介し、ときには挑発的で下品で誇張した表現を取り入れることにより、「文明開化」主張の核心に踏み込み、話題の本質を広く明治社会に広めることに貢献したのではないかと指摘しました。

 仮名垣魯文や条野採菊といった著名な戯作者のほかにも、浮世絵師の落合芳幾や講釈師松林伯圓ら、幅広い分野にわたる芸術家の活躍に言及され、士族と平民の垣根を越えた明治期の粋で豊穣な「文化」を垣間見ることができました。
 
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)