■トピックス  2019年

2019-12-19 日文研の話題

[木曜セミナー・リポート]日本関係欧文史料の世界―外書プロジェクトの研究活動と成果発信(2019年11月28日)

 今回の木セミでは、創設準備期より日文研が精力的に収集してきた「外書(日本関係欧文図書、西洋古版日本地図)」をめぐり、研究チームのメンバーが、資料の魅力や現在推し進めている研究活動、さらには研究成果発信ツールについて熱く語りました。
 
 日文研では、創立以前の創設準備期から、海外から日本はどう見られていたか、どう思われてきたかを知るための資料として、日本旅行記や日本見聞記といった外国語で書かれた日本研究書の収集を行っています。そして、「外国語で書かれた日本研究書」を略して「外書」と名付け、プロジェクト直轄で積極的に収集や研究に取り組んできました。
 
 さて、今回のセミナーの口切役は、外書プロジェクトの現プロジェクトリーダーを務めるフレデリック・クレインス准教授。自身が日文研に着任してから現在までのおよそ15年間、「外書」と共に歩んだ日々を振り返り、「外書」のなかでも、とりわけ日本開国期以前に刊行された、延べ500点にも及ぶ日本関係欧文図書・西洋古版日本地図コレクションの概要や特徴、各資料の魅力に言及しました。特に、カロン『日本大王国志』を例とした難解な文字の解読方法や書誌作成にまつわる妙技の話題では、会場に納得と感嘆の吐息が響きました。また、クレインス准教授は現在遂行している外書プロジェクト成果発信ツール「日本関係欧文貴重書データベース」と、Webサイト「日本関係欧文史料の世界」についても、各種コンテンツの内容や、資料の魅力を発信するために講じている工夫、さらに現在の形になるまでに積み重ねてきた改善過程などの事例を交えて紹介しました。
 
 クレインス准教授に続いて、同プロジェクトに参画する光平有希特任助教、ゴウランガ・チャラン・プラダン機関研究員、そして技術補佐員の小川仁氏(併任:関西大学博士研究員)が個別に手掛けている業務について報告を行いました。音楽史を専門とする光平は、これまで日本関係欧文図書や西洋古版日本地図を主たる対象として研究を進めてきた外書プロジェクトにおいて、開国期前後に日本を題材として作られた西洋の音楽作品(日本表象西洋楽曲)の研究に着手。今よりも格段に日本に関する情報が限られていた時代、西洋人はどのように音楽で日本を表現し、それを民衆はどのように聴いていたのか、新しい切り口からの日本関係欧文史料研究・大衆文化研究を模索しています。
 
 次いで、ゴウランガ氏は、リサーチアシスタント(RA)としてプロジェクトに所属する宋埼氏(総研大院生)と共同で行っているWebサイトの記事掲載やバックアップ作業、アクセス解析の方法について報告した後、自身の専門領域である日本文学からの関心に引き寄せ、現在カロン『日本大王国志』の和訳を進めていること、また、西洋で出版されたテキストが、いかに日本に紹介され、日本の作品にどのように影響を与えたのかについて考察を重ねていることについても言及しました。

 最後に発表のトリを飾った小川氏は、ラテン語やイタリア語をはじめとする南欧語を主軸に「外書」研究を進めてきた自身の歩みや刊行著作の紹介、さらに現在Webサイトに掲載している自身の資料解説やエッセイについて、作成時に心がけている点や、外書の魅力を伝えるための努力について報告しました。報告後は、フロアも交えて活発な質疑応答が行われ、プロジェクトのこれからの研究活動と成果発信に大きな期待が寄せられました。
 

(文・光平有希 総合情報発信室 特任助教(人文知コミュニケーター))