■トピックス  2019年

2019-12-18 日文研の話題

[日文研フォーラム・リポート]戦争の語られ方と歴史認識とのあいだで(2019年11月20日)

 11月20日、ハートピア京都にて、日本の現代史を専門とする西野亮太外国人研究員(南太平洋大学[フィジー]上級講師)を講師に迎え、日文研フォーラムが開催されました。「「旅する記憶」太平洋戦争の記憶と追体験——パプアニューギニア戦線を中心に」と題した講演に104名が参加しました。

 日本の敗戦後、太平洋戦争の記憶が時間の経過とともに薄れるなか、戦争を描く小説、映画、漫画、テレビ番組等の制作は絶えることなく続いています。西野研究員は、様々なかたちで生まれるそのような戦争記録を「旅する記憶」と名づけ、時と場所を越えて記憶が想像/創造、そして再想像/再創造されてきた過程をテキストや映像をもとに丁寧に解説しました。

 間嶋満『地獄の戦場ニューギニア戦記』や水木しげる『水木しげるのラバウル戦記』等、元兵士の手記が「地獄」としての戦場を証言する一方で、『ゆきゆきて、神軍』(原一男監督、1987年)や『戦場の女たち』(関口典子監督、1989年)といったドキュメンタリー映画では加害者としての日本軍兵士の実態が浮き彫りに。ほかにも紀行文やルポルタージュなどが次々と紹介され、歴史を語る人や場所、語られ方によって、戦争の記憶には埋めがたい溝が横たわる事実を明らかにしました。とくに、日本ではほとんど知られていない、連合国軍との激戦地パプアニューギニアの住民被害の話はあまりにも痛ましく、強い印象を残しました。

 発表後には、コメンテーターの楠綾子准教授が、戦争の時代を指導者側からだけではなく、一般の人の視点から考える大切さを説くとともに、「誰の歴史認識か」と問いかけ、その後の議論へとつなげました。
 
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)