■トピックス  2019年

2019-12-06 日文研の話題

【人コミュ通信】「メキシコの知られざる大衆漫画『イストリエタ』展」企画者インタビュー

人文知コミュニケーター(略して「人コミュ」)の光平が日文研の研究活動やイベント、所属研究者をマルっとご紹介する「人コミュ通信」。今回は、12月7日より京都国際マンガミュージアムで開催される「メキシコの知られざる大衆漫画『イストリエタ』展」企画者の方々に、展示の見どころや企画に対する熱い想いをうかがってきました!

インタビューにご協力くださったのは、本展示の企画者である独立系研究者のアウレコエチェアさん【以下 ア)】、メトロポリタン自治大学教授のバルトラさん【以下 バ)】、メキシコ漫画博物館館長ソトさん【以下 ソ)】、日文研プロジェクト研究員のアルバロさん、そして通訳の太田さんです。


Q1. 企画展の見どころ、楽しみ方を教えてください。

バ)

メキシコの漫画にはどのような形式があるのか、日本と異なる国、とりわけメキシコという漫画文化上ではあまりよく知られてない国の漫画を知るっていうところが、今回の見どころです。そして、日本漫画のフォーマットやスタイルと比べて、メキシコではどう違う、あるいはここは似ているなぁとか、そういった部分を照らし合わせつつ、日本以外の国の漫画の伝統、漫画文化を探っていくと楽しいと思いますよ!


ア)

比較といえば…、20世紀メキシコの漫画ではどのような題材を扱い、そしてどのようなテーマ設定でストーリーが構成されていたのか。さらには、日本でもお馴染みのヒーローや子どもといった人物像をどのように描いていたのか。そういったところも日本の漫画と比較しながら見てみると面白いと思います。それから、会場には時代区分を示した図表もあります。時代を追いながら両国の漫画文化を知ることができるよう、工夫を凝らし、多くのエッセンスを凝縮した展示に仕上がっているので、その点もぜひお楽しみください。


ソ)

展示会ももちろんですが、今週末にある講演会も必見・必聴です!ぜひご来場ください!!日本漫画、そしてメキシコ漫画との意外な共通点や魅力がさらに見つかるはずです。



Q2. 展示の企画に際し、特に心がけたことはどのようなところですか?

バ)

イストリエタ作品の数や作者など、今回の企画展示では多岐にわたる大きなテーマを扱っています。それを1つの企画展に落とし込み、端的に凝縮してまとめること、それは非常に難しい作業でした。それに、漫画は1つの作品(1冊)に含まれる画の1枚1枚すべてが非常に大事なものです。そのどこの部分を展示で見せるのか――??そのことも非常に悩みました。大いに悩みつつ、その中で心がけたのはビジュアル的な要素を重視することでした。例えば、紙面と表紙を同時に見せたり、キャプションで具体的な例を記述したり。分かりやすさを追求しながら手探りで企画を練りました。


ソ)

今回の展示で重視したのは「人」です。中でも、特に大きな存在は、やはり「作者」です。今回展示されている作品の作者のうち、多くの方が無名で貧困のなか亡くなりました。そういったメキシコの中でも、あまり名前を知られずに亡くなった作家を、このような形で、日本で名前を知っていただけることは、非常に意味があることだと思います。そして、作家の名前というものがメキシコの外に出るというのは、作家本人だけでなく、そのご家族も含めてとても大切な意義があることだと思います。また、「人」という観点でもう1つ大事だと思うのは、これらの作品を寄贈・寄付した人たちにも感謝することだと思います。漫画を大切に保管してくれた人たちのおかげで、イストリエタというものを見直すことができる。そして、その機会はイストリエタに限らずメキシコを見直す機会にも繋がっていく。そういう点において、資料を保管し繋いでくれた人たちもまた、今回の企画展で非常に重要な役割を担ってくれていると私は考えます。



Q3. 来場者の方に、特に見てもらいたいイチオシの資料がありましたら教えてください。

ア)

まず、20世紀の人気漫画アンドレス・アウディフレド作『まつげさん』の原画。この作品からメキシコの大衆漫画が始まったといっても過言ではありません。そのような観点から『まつげさん』の原画資料はイチオシです。それからもう1つ。ガブリエル・バルガス作『ボロラ・タクチェ』の原画もぜひ見ていただきたいですね。この作品のヒロイン「ボロラ・タクチェ」(通訳の太田さん補足:日本の「サザエさん」のような存在)なくして、イストリエタを語ることはできないほど、メキシコ漫画史上では重要なキャラクターです。


バ)

まずね、今回展示されているコレクション。これは私のコレクションです(笑)だから全てイチオシです。でも特にと言いますと…、確かに、原画というたった1つしかない価値ある作品も大事ですが、漫画の場合、原画以外にも雑誌など出版物となって普及するといった、いわゆる美術品とは違った価値もあります。そこには、雑誌の形であってもサイン入りのものもあるかもしれないし、また、発行部数が爆発的に多いもの、それにも作品としての価値が付加されます。そういった意味合いで、今回の展示では原画だけではなく、出版物としての漫画の価値も見出しつつ見ていただけたら嬉しいです。


ソ)

イチオシというと…やっぱり、展示会だけでなく、講演会大事です(本日2回目・笑)!私たちが、日本に滞在している間にだけ公開される資料もあるかもしれないし、講演の時だけ触れる資料もありますから。なので、やっぱり講演会をぜひ聞きにきてください!



プロジェクト研究員のアルバロさんによると、今回の企画展では上記の先生方が選別された数多くの資料の中から、実際にどの作品を展示するのか。また、本来、手に取ることができればダイレクトに伝えられることのできる資料の魅力を、展示という形でいかに表現したら良いのか。それらの点にも非常に苦心しつつ、試行錯誤を重ねながら展示内容を模索されたようです。

魅力あふれる「メキシコの知られざる大衆漫画『イストリエタ』展」。ぜひご来館ください!そして、12月7日・8日に行われます講演会にも、ぜひぜひ足をお運びください!!!



[総合情報発信室 特任助教(人文知コミュニケーター) 光平有希]
インタビューにご協力くださった皆さん。左からアルバロさん、ソトさん、バルトラさん、アウレコエチェアさん、太田さん。
企画展にあわせて制作された図録を見ながら。
インタビュー中の様子。
インタビュー中、漫画家でもあるソトさんが手元の付箋に人コミュを描いてくださいました。