■トピックス  2019年

2019-11-21 日文研の話題

チェコ科学アカデミーと日文研との交流(2019年10月〜11月)

 10月から11月初旬にかけて、チェコ共和国首都プラハにあるチェコ科学アカデミーと日文研との間でさまざまな交流活動を進めることができました。以下、報告いたします。
 
 10月11、12日に、チェコ科学アカデミー東洋研究所(Oriental Institute of the Czech Academy of Sciences)にて“Crossing Borders: Past and Future of Japanese Studies in the Global Age”と題した、日本・チェコ交流100周年記念プレ・シンポジウムが開催され、日文研からは磯前順一教授と安井眞奈美が発表し、さまざまな研究者と日本研究の現状と今後について議論しました。(プログラム参照)
 
 また10月29日には、チェコ科学アカデミー東洋研究所の皆さんを日文研にお招きしました。所長のOndřej Beránek(オンドレイ・ベラネック)氏、学科長のJakub Hrubý(ヤクプ・フルビー)氏、中央研究院台湾リサーチセンター長のTáňa Dluhošová(ターニャ・ドゥルホショバ)氏、研究員の豊沢信子氏が日文研を訪れ、小松和彦所長に挨拶された後、図書館などを見学されました。その後、所長主宰研究談話会「人文学の未来を考える」(2019年度第3回)にて、「中東欧の日本研究の現状とこれから」というテーマでお話しいただきました。
 
 談話会では、チェコ科学アカデミーについて、所長のOndřej Beránek氏からご講演がありました。チェコ科学アカデミーは、チェコでの指導的かつもっとも著名な学術研究所で、科学技術や生命科学、社会科学など全部で54の研究所からなり、東洋研究所は16ある人文社会科学の研究所の一つとのことです。チェコ科学アカデミーの歴史は18世紀後半に遡り、現在では約8000人が研究などに従事、各研究所が現代社会のさまざまな問題に取り組む最先端のプロジェクトを遂行しています。
 次に、Jakub Hrubý氏と豊沢信子氏が、「中東欧で日本・アジア研究のセンターとなるために:研究連携の意義と展望」(Becoming the center of Japanese/Asian Studies in Central and Eastern Europe: In pursuit of Academic Partnerships)とのテーマで、東アジア部(East Asian Department)について紹介されました。東アジア部は中国研究、日本研究、韓国研究からなり、これまで中国研究がもっとも精力的に進められてきました。
 チェコの日本研究は、19世紀末からの蓄積がありますが、近年低迷していたところ、10年近くの空白を経て、日本研究の研究員に豊沢氏が就任されました。以降、日本研究の新たなプロジェクトを次々に着手されているところです。来年2020年は、日本とチェコが外交関係を樹立してから100周年にあたり、その記念シンポジウムなども企画されています。
 そのような報告を受け、ディスカッションでは、今後のチェコの日本研究のあり方、日本との研究を介した交流、またチェコや東欧に眠っている日本関係の文書やさまざまな文献資料を発掘しながら研究を進めることで、これまでの日本研究とは異なる新たな研究の可能性が開けるのではないか、といった展望が示されました。
 日文研の活動紹介は荒木浩・副所長が英語で行い、日文研との今後の交流について意見交換が行われました。フロアからも積極的に質問、意見が出され、たいへん有意義な談話会となりました。
 
 また、11月初旬には台湾で開催された東アジア日本研究者協議会第4回国際学術大会(福華国際文教会館、台湾大学)に参加した藤本憲正・機関研究員が、チェコ科学アカデミー東洋研究所中央研究院台湾リサーチセンターを訪れ、所長のTáňa Dluhošová 氏とデータベースや日本研究の今後の在り方について情報交換を行いました。
 
 このようにここ1ヶ月の間に、チェコ科学アカデミーと日文研の間で、今後に続く有意義な交流を進めることができました。これらの活動を、来年度の日本・チェコ交流100周年、また将来の交流につなげていければと思います。


(文・安井眞奈美 研究部 教授)
プラハにあるチェコ科学アカデミー東洋研究所
チェコ科学アカデミーでのシンポジウム(安井 発表)
シンポジウム・プログラム(10月11日)
シンポジウム・プログラム(10月12日)
小松所長とチェコ科学アカデミー東洋研究所の皆さんとの面談(左より豊沢研究員、フルビー学科長、ベラネック所長、小松所長、安井、磯前教授)
フルビー学科長、豊沢研究員の御発表
台北のチェコ科学アカデミー東洋研究所中央研究院台湾リサーチセンター