■トピックス  2019年

2019-11-14 日文研の話題

[日文研企画展リポート]「草の根のアール・ヌーヴォー」展 開催中

 国際日本文化研究センター(日文研)では現在、京都工芸繊維大学との共同主催により、同大学美術工芸資料館にて「草の根のアール・ヌーヴォー――明治期の文芸雑誌と図案教育」展を開催しています。

 機関拠点型基幹研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」の企画・監修による本展では、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで流行した「アール・ヌーヴォー」と呼ばれる装飾性豊かな芸術スタイルが明治期日本で広がりを見せた様相を160点余りの資料で紹介しています。

 1900年のパリ万国博覧会でアール・ヌーヴォーと出会った洋画家・浅井忠(1856-1907)は、帰国後に着任した京都工芸高等学校(京都工芸繊維大学の前身の一つ)で、西洋の新潮流をいち早く教育に取り入れました。1階のメインフロアでは、浅井ら教授陣が図案(デザイン)の参考資料として購入したフランスのポスターやアルフォンス・ミュシャの『装飾資料集』などとともに、学生たちがそれらを手本として制作した模写図がスケール感いっぱいに比較展示され、新しい表現方法やモチーフを学び取ろうとする当時の熱い思いを今に伝えています。

 さらに本展の見どころとしては、「謎の挿絵画家」といわれ、近年になって再注目されつつある一条成美(1877-1910)の貴重な作品約60点を一望できる点も挙げられます。アール・ヌーヴォーを代表するチェコ出身の画家ミュシャのデザイン様式を、叙情的な日本の少女像へと昇華させた一条の絵が、『明星』をはじめ、『新聲』『新小説』『女学世界』など数々の文芸誌の表紙を飾り、近代文学のビジュアルイメージを牽引していた事実にあらためて目を見開かされました。同じコーナーで特別出品されている河瀬満織物株式会社による、ミュシャ絵画モチーフの着物や帯などの西陣織作品も見事です。

 京都文化博物館で開催している「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ――線の魔術」展(2020年1月13日まで)の前史ともいえる本展は11月22日(金)まで開催中。どうぞお見逃しなく!
 
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)
 
日文研の所蔵資料も展示中
会場風景