■トピックス  2019年

2019-10-03 日文研の話題

[日文研フォーラム・リポート]軍神?大菩薩?はたして八幡神の正体とは・・・(2019年9月13日)

 9月13日、ハートピア京都にて、日本中世思想史を専門とするアンナ・ドゥーリナ外国人研究員を講師に迎え、日文研フォーラムが開催されました。「八幡神、変貌するその姿」と題した講演には193名が参加しました。

 古代の記紀神話に登場しない渡来系の神であった八幡神は、奈良時代に国家と仏教の守護神として九州の宇佐から奈良の都に現われて以来、各地に勧請されて急速に全国へ広まったといわれます。平安後期には、京都の石清水八幡宮が伊勢神宮に次ぐ尊崇を朝廷から集め、八幡神はやがて、武士が戦勝を祈願する武神としても信仰されるようになりました。

 八幡神について10年以上研究を続けているというドゥーリナ研究員は、「おもしろさや謎が数多くある」と、その研究の魅力を語り、時代の要請に応じて八幡神の姿が変貌を遂げていった様子を詳細に解説しました。その正体は、衆生を救済する大菩薩であり、畏れられる軍神であり、時には天皇と同体として信仰を集めた存在でもあったといいます。そのような多面性は、現世の人びとの移りゆく信仰のかたちそのものであり、コメンテーターの磯前順一教授も「我々の身の回りの信仰についてあらためて考えさせてくれる大事な講演だった」と感想を述べました。

 発表後には、やはり日本の宗教思想史を専門とするジェームス・ケテラー外国人研究員(シカゴ大学教授)や、八幡神社等の組織研究で知られる徳永健太郎氏(早稲田大学非常勤講師)らもフロアから発言し、参加者と一体となった和やかな議論が続きました。
 
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)