■トピックス  2019年

2019-07-08 日文研の話題

[木曜セミナー・リポート]挑戦し続ける図書館と、海外利用者の今(2019年6月20日)

 6月20日の木曜セミナーでは、江上敏哲・資料利用係長が、「図書館が日文研と世界をつなぐ」と題し、現在積極的に推進している、OCLCを利用した海外の図書館向けサービスについて紹介しました。
 
 OCLC(Online Computer Library Center)とは、アメリカ合衆国の図書館サービス非営利機関で、北米を中心に世界172カ国/地域から72,000以上の図書館が参加しています。日本のほぼ全大学が参加しているNACSIS-CAT(国立情報学研究所[NII]が提供する総合目録・情報データベース)の登録書誌数1,200万件に対し、OCLCの総合目録であるWorldCatの書誌総数は世界最大規模の4億件に上るといいます。しかしながら、日本からの参加は、国立国会図書館や早稲田大学図書館等、ごく少数に止まっているのが現状です。

 日文研は昨年2月にOCLC WorldCatにて目録情報の公開を開始しました。それによって世界の学術機関・研究者が、日文研図書館所蔵の日本語・外国語図書など約30万件の書誌情報を検索することが可能になりました。さらに昨春からはOCLC WorldShare ILLを利用したILLサービス(国内・海外の図書館間で、図書貸借や複写を相互に実施)もスタートさせ、それまでは年間10件に満たなかった海外からの問い合わせが、初年度だけで500件以上に達する反響を見せています。

 江上係長は報告の中で、OCLC参加によって得られた効果として、日文研の存在意義を広報できたことと同時に、海外ユーザーのニーズの実態把握を挙げました。例えば、古典籍への関心が高く、中国語や韓国語図書など日本語以外の文献の需要が多いこと、また、アニメ・マンガから軍事・産業まで、求められる分野は多岐にわたることなど、予想以上に多くの知見が得られたといいます。他方、課題としては、年間の経費負担など実務面のほか、日本国内機関の参加促進の必要性を挙げました。

 今後もさらなる“海外対応”に向けて図書館サービスをよりいっそう充実させるとともに、例年開催される図書館関係の国際会議へ出席するだけではなく主体的に参画することにより、貢献度を高めていきたいと抱負を語ってくれました。会場には、国立国会図書館や京都大学図書館のほか、海外の大学図書館職員も駆けつけ、活発な質疑応答が続きました。
 
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)