■トピックス  2019年

2019-06-07 日文研の話題

坂本龍一氏を招いて研究会を開催しました

 今年度よりはじまった共同研究「マス・メディアの中の芸術家像」のキックオフとなる研究会が、5月13、14日に日文研にて開催。14日には坂本龍一氏を招いてインタビューを行い、メディア・パフォーマンスの諸相について貴重なお話を伺いました。

 第1日目は、本研究が主題とする領域と研究手法に関して、研究代表者(松井茂客員准教授、坪井秀人教授)がプレゼンテーションを行い、共同研究員と共にディスカッションをしました。研究の前提として、第2次世界大戦後、放送文化(ラジオとテレビ)と出版文化(主に総合誌)の普及により、芸術に関する情報が流通し、マス・メディアでの活動を前提とした芸術家や作品が成立してきたことを確認しました。本研究では、同一のメディア環境を基盤として見なすことから、1968〜1995年を研究対象として、言わば日本のポスト・モダン期の芸術表現の位相とその意義を、再配置することが目論まれています。
 研究テーマのトピックとしては、建築家でありポスト・モダニズムをリードした思想家としての磯崎新、音楽に留まらないパフォーマティヴなメディア活動を展開する坂本龍一、1990年代前半にメディア上で展開した「湾岸戦争論」(現代詩の論争)、テクノロジー、パフォーマンス、フェミニズムが挙げられています。

 第2日目は、川崎弘二(相愛大学音楽学部・非常勤講師/日文研共同研究員)による、第2次世界大戦後、日本のマス・メディアにおける作曲家像、音楽家像に関する報告。三人の会(芥川也寸志、團伊玖磨、黛敏郎)、武満徹、坂本龍一という文脈の整理を、メディア環境の変遷と共に整理してもらいました。これをうけて、午後から坂本龍一氏をお招きし、 1980年代、特にYMO以後、1984年の本本堂(出版社)設立、MIDI(レコードレーベル)の立ち上げといった、従来の意味での音楽外の活動に関するスタンスを中心に、そのお考えを伺いました。ナム・ジュン・パイク、ローリー・アンダーソンの来日、交流が相次いだ1984年は、坂本氏にとっても「パフォーマンス元年」という認識があり、領域横断的な可能性を強く感じた時期であったことを伺う貴重な機会になりました。