■トピックス  2019年

2019-04-12 日文研の話題

[Evening Seminarリポート]我々にとって「宗教の自由」とは何か(2019年3月7日)

 3月7日、ジョリオン・トーマス氏(ペンシルベニア大学助教)を講師に迎え、英語によるイブニングセミナーが開催されました。

 近代日本の宗教を主たる研究分野とするトーマス氏は、2冊目となる著書Faking Liberties: Religious Freedom in American-Occupied Japanをこの3月にシカゴ大学出版局から刊行したばかりです。今回は“Legacies of Religious Freedom in American-Occupied Japan: State Shinto, New Religions, and Buddhist War Responsibility”(連合国軍占領下の日本における宗教の自由という遺産――国家神道、新興宗教、仏教の戦争責任)と題し、その成果の一部を披露しました。

 第二次世界大戦後に日本を占領下に置いた、アメリカをはじめとする連合国軍は、日本の宗教は政治的問題であるとみなし、その問題解決の一案として、宗教の自由を掲げました。しかしその一方で、日本での宗教の自由をめぐる長い論争の歴史を顧みることはなかったといいます。また、占領軍自身も、宗教とは何か、どのような状態が自由かという点については、明確な結論を避けたと指摘します。報告では、日本と世界双方において続く論争の始まりからその後の展開までを時間軸で追いながら、宗教/信仰の自由と政治との関わりを、市民権とも絡む今日的課題として浮き彫りにしました。

 ちなみに、「明治天皇」「国家神道」「軍服と刀」等を主題とした占領軍による記録映像もふんだんに織り込みながらの説得力ある、堂々とした発表は非常に刺激的で、「まるでプレゼンテーションのお手本のようだ」と、終了後にひそかな話題を呼んでいました。

 長年にわたり企画・司会を担当されたパトリシア・フィスター教授の最終セミナーとなったことも付記しておきます。大変お疲れ様でした。
 
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)