■トピックス  2019年

2019-04-09 日文研の話題

[日文研フォーラム・リポート]近代中国革命に果たした「明治維新」の役割とは(2019年3月12日)

 3月12日、ハートピア京都にて、楊際開 外国人研究員(杭州師範大学国学院専任研究員)を講師に迎え、日文研フォーラムが開催されました。「近代中国革命の思想的起源――日本からの建国思想の受容を中心に」をテーマとする講演に166名が参加しました。

 東アジアの政治思想史を専門とする楊研究員は、「清朝(1616~1912)はどのように崩壊したのか」という大きな命題の下、従来の財政史・経済史とは異なる、東アジア内部の文化交流史という視点から、清朝の政治的正統性が切り崩されていく過程を明らかにしました。

 発表では「親民説」の台頭にはじまり、徂徠学の伝播とその意味、華夷思想の反転、最高権力の実態に対する再認識という四つの側面から考察を進めました。そして、大塩の乱(天保期)を起点とする明治維新は、思想史的な意味では儒教文明の起死回生をもたらし、「法の精神」によって君主主権から人民主権へと政治構造を転換させたと高く評価した上で、東アジア史においては近代中国革命の出発点ともなったと結論づけました。

 講演後は、コメンテーターの瀧井一博教授が、昨年の明治維新150年をめぐる国内外の動きを振り返り、「立憲主義の実験場としての近代日本」を作り上げた「明治」という時代について、楊研究員とのさらなる議論を深めました。
 
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)