■トピックス  2019年

2019-03-15 日文研の話題

[木曜セミナー・リポート]“基礎” を学ぶことの大切さを教えたい(2019年2月21日)

 2月21日、「日文研で学ぶこと/学べること 基礎領域研究の挑戦」をテーマに、外部の院生の方々の参加も得て、木曜セミナーが開催されました。「基礎領域研究」の講座を開講している4名の教授が、講座同士の横のつながりを強めるとともに、若い世代への活動紹介と教職員の交流を目的に、それぞれの講座内容について発表し、意見交換を行いました。

 「基礎領域研究」とは、古文書読解力、外国語の運用、映像資料の解読、文化理論への習熟等、日本文化研究に必要なさまざまな能力を異なる研究者と共有することを目的としたゼミナールです。

 当日は始めに、坪井秀人教授による趣旨説明に続き、「フランス語基礎運用(初級)」「フランス語読解補助・論文作成指南(中級)」について、稲賀繁美教授が報告しました。フランス語講座開講のきっかけは、英語以外の外国語を勉強したいという声があったことと、教えることにより、自身の語学力の「さび止め」というねらいもあったと明かした稲賀教授。院生や若手研究者だけではなく、職員の参加を積極的に歓迎し、外国人研究員とのふれあいも含めた小さな研究所ならではの密な交流を図りたいと述べました。

 次に、「この世で一番好きなことの一つは、英語を教えること」だという牛村圭教授が、「英文日本歴史研究書講読」講座に込めた思いを語りました。きちんと英語を読む場を提供したいと考えた際に最も留意したのは、英文テキストの選択だったといいます。日本史を論じた良い文章で、しかも専門的過ぎないこと。受講生の一人であるインドからの留学生は、牛村教授の日本語訳指南は、日本語で論文を書く際にも非常に役立つと補足してくれました。

 三番手の瀧井一博教授は、「近現代史史料文献研究」講座について、旧幕臣の日記などの史料講読のほか、課題図書の読書会も行っていると紹介しました。そして、院生時代の恩師の言葉を引用しつつ、デジタル化社会によって史料の海が無限に広がる一方で、若い人たちと共に「歴史的構想力」をみがく集まりにしたい、と抱負を語りました。

 最後に、「“教育をしないこと”をポリシーとしてきたが、実は教えることが好き」という坪井教授が、これまでの4年間に10人前後のメンバーで行ってきた「文学・文化史理論入門」の記録を振り返り、次世代の研究者育成の場として、異分野の人々の交差する場として、「基礎領域研究」の重要性と、さらなる可能性を強調しました。


(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)