■トピックス  2019年

2019-02-22 日文研の話題

[日文研フォーラム・リポート]東アジアの交流と動物をめぐる古代秘話(2019年2月12日)

 2月12日、ハートピア京都にて、王海燕・外国人研究員(浙江大学教授)を講師に迎え、日文研フォーラムが開催されました。「古代日本の国際交流における動物の贈答――ラクダ・羊を中心に」をテーマとする講演に163名が参加しました。
 日本古代史・古代日中関係史の研究を専門とする王研究員は、古代日本と東アジア諸国の交流において動物が果たした役割について、日中両国の幅広い文献を基に紹介しました。それによると、六世紀から十二世紀にかけて、中国や朝鮮半島から日本列島に交流の証としてもたらされた動物は、馬・ラクダ・ロバ・ラバ・羊・クジャク・オウム・犬・ガチョウ・黒猫など多種多彩でしたが、日本側からは軍事・農耕などに実用性の高い馬・牛の贈答が専らだったといいます。
 発表では特に、ラクダと羊を中心に取り上げ、贈与側の意図と、受け取った日本側の反応について興味深いエピソードが語られました。例えば、六~七世紀の百済が特産品でないラクダをわざわざ取り寄せ日本へ贈ったにもかかわらず、日本側ではさほど喜んだ様子がなかったという話や、中国から瑞祥の意味を兼ねて贈られた羊も、後代になると、疫病との関係を疑った日本が返却する例もあったという話など。東アジアの中でも国によって異なる動物観については、コメンテーターの伊東貴之教授も解説を加え、人間の思惑によって利用された動物をめぐって、客席からも熱心な質問が相次ぎました。


(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)