■トピックス  2019年

2019-02-22 日文研の話題

国際シンポジウム「在外資料が変える日本研究」を平戸で開催しました(2019年2月9日)

 2月9日、平戸オランダ商館にて「国際海洋都市平戸と異文化へのあこがれ―在外資料が変える日本研究―」と題する国際シンポジウムが開催されました。本シンポジウムは、人間文化研究機構ネットワーク型基幹研究プロジェクト「日本関連在外資料調査研究・活用事業」のうち、「ハーグ国立文書館所蔵平戸オランダ商館文書調査研究・活用」の成果をゆかりの地で紹介することを目的に、平戸市と松浦史料博物館、平戸オランダ商館との共催により実現したもので、当日は計113名が参加しました。
 はじめに、岸上伸啓・人間文化研究機構理事と岡山芳治・松浦史料博物館館長の開会挨拶に続き、稲賀繁美教授が趣旨説明を行った後、松田清・京都大学名誉教授による基調講演「松浦静山と平戸商館時代」が行われました。続く第一部では、ハーグ国立文書館所蔵の平戸関係文書の解読を進めているフレデリック・クレインス准教授とシンティア・フィアレ・ライデン大学研究員が、オランダ商館初期の知られざる活動実態を報告したほか、前田秀人氏(平戸市文化観光商工部)がオランダ商館の会計帳簿について、福岡万里子・国立歴史民俗博物館准教授が、シーボルト晩年の「日本博物館」構想をめぐる“謎”について、それぞれ報告しました。
 第二部では、シルヴィオ・ヴィータ京都外国語大学教授が、昭和戦前期に大分でキリシタン資料を収集していたイタリア人宣教師マレガ神父の活動を紹介。次いで、朝日祥之・国立国語研究所准教授が、ハワイ出身の帰米二世である比嘉太郎が収集した資料をデジタル人文学の手法で整理した結果を報告するとともに、根川幸男機関研究員が、日本最初期の移民として、平戸からブラジルへ渡った山縣勇三郎の足跡をたどる発表を行いました。最後の質疑応答では、他県からはるばる駆けつけた山縣勇三郎氏の子孫も紹介されるなど、大航海時代を象徴する施設内の会場は大いに盛り上がり、しばし話題は時空を越えて、交流を深めることができました。
 翌10日のエクスカーションでは、平戸市文化観光商工部の前田秀人氏と、松浦史料博物館学芸員の久家孝史氏、平戸オランダ商館学芸員・出口洋平氏の案内により、まずキリシタン殉教の地といわれる根獅子の「平戸市切支丹資料館」を見学しました。その後、昨年「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産に登録された、春日集落や中江ノ島地域を訪れ、現在のキリシタン集落の様子について、地元の方にお話を伺う貴重な機会を得ました。最後は、重要文化財でもある田平天主堂を見学し、帰途に着きました。お世話になった平戸市ならびに関係者の皆様、本当にありがとうございました。


(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)
基調講演を行う松田清・京都大学名誉教授
報告を行うクレインス准教授とフィアレ研究員
総合討論風景
発表する根川機関研究員
根獅子海岸にて
田平天主堂にて