■トピックス  2019年

2019-02-22 日文研の話題

[Evening Seminarリポート]和凧の歴史と伝統が結ぶグローバルな交流 (2019年2月7日)

 2月7日、セシル・ラリ外来研究員(日本学術振興会外国人特別研究員)を講師に迎え、英語によるイブニングセミナーが開催されました。
 “The Kites of Shirone: How to Make a Small City Known Worldwide”(白根の凧――小さな町が世界的に知られるようになった理由)と題し、300年もの伝統を誇り新潟県の指定無形民俗文化財でもある「白根大凧合戦」をテーマに発表が行われました。
 「白根大凧合戦」は、信濃川の支流、中ノ口川の両岸から二十四畳の大凧を揚げ、空中で絡ませて川に落し、相手の凧綱が切れるまで引き合う対戦で、世界最大級の凧フェスティバルといわれます。越後平野の初夏を彩る風物詩として親しまれている伝統行事です。1737(元文2)年に始まったという伝承があり、以来、大凧の制作技術にも改良が加えられ、現在の東軍対西軍の合戦ルールができあがったのはおよそ100年前に遡るとか。白根には、大凧の実物を展示し歴史を紹介する博物館も完備され、いまや世界中の凧ファンが注目する名所となっているそうです。
 2013年にパリの美術館で和凧コレクションに出会ったのを契機に、日本各地をめぐって凧の調査研究を進めているラリ研究員は、「白根ほど多彩な凧や関連美術品が集まっている所は他にない」と言い、「ぜひ訪れるべき町」と強調しました。発表では、白根の凧の魅力に惹かれ、地元住民との親交を結んだ外国人のエピソードも披露。なかでも、日本に初めてスキーを紹介したことで知られるオーストリア=ハンガリー帝国の軍人レルヒが「日本古来の武士道的合戦」と激賞し、1911年に母国から優勝旗を取り寄せて寄贈したという逸話などはとても興味深く聴きました。
 会場には、ラリ研究員が友人の写真家とともに昨年パリで二度にわたって開催した写真展 “WADAKO: Stories of Japanese Kites” の一部作品も展示され、現代アートにも通じる和凧の新鮮な魅力を印象づけました。


(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)