■トピックス  2019年

2019-02-07 日文研の話題

木曜セミナー「日文研の共同研究成果報告(第2回)」を開催しました(2019年1月24日)

 木曜セミナーでは昨年来、日文研の研究活動について所内で自省的に振り返るとともに情報共有を活発化し、今後の進展への糧とすることを目的に、共同研究や主催学会・行事等をテーマとした報告と意見交換の機会を折々に設けています。
 9月20日には「日文研の共同研究成果報告(第1回)」と題し、山田奨治教授・倉本一宏教授・井上章一教授の3名が、それぞれ代表を務めた共同研究会に関し、運営上の特色や苦心談を披露するとともに、成果出版物の概要を紹介しました。11月29日には「第3回東アジア日本研究者協議会国際学術大会を終えて」として、大会の実行委員長を務めた松田利彦教授をはじめ、各担当部門の企画運営に携わった荒木浩教授、白石恵理助教、藤川剛研究支援係係長の計4名が、準備期間から当日までを振り返っての成果や反省点、今後への課題等について報告を行いました。

 新年初となる1月24日は、「日文研の共同研究成果報告」の第2回目として、主に共同研究の成果出版物をテーマに3本の報告と意見交換が行われました。
 まず大塚英志教授が、共同研究報告書『動員のメディアミックス――〈創作する大衆〉の戦時下・戦後』(大塚英志編、思文閣出版、2017年)誕生に至るまでの共同研究会のテーマや方針の変遷、研究者ネットワーク拡大などの経緯について、丹念に解説しました。発表後には、まんがやサブカルチャー分野では数多い“在野”の研究者が日文研の所蔵資料にアクセスしやすくなるような、よりオープンで手軽な媒体の必要性を訴え、それが真の意味での「学際」だと指摘しました。
 二番手の劉建輝教授は、2015年度に黄自進氏(台湾・中央研究院近代史研究所研究員/日文研外国人研究員[当時])が主宰した共同研究会の成果報告書『<日中戦争>とは何だったのか――複眼的視点』(黄自進・劉建輝・戸部良一編、ミネルヴァ書房、2017年)を取り上げ、日本人7名、中国と台湾出身者6名という執筆陣の、それぞれ異なる歴史認識が浮かび上がった本書の内容を詳しく紹介。「日本と中国における記録の相違が激しい中、今後、日中間の戦争をどのように検証するかが新たな課題だ」と述べました。
 最後は、1997年から20年以上にわたって共同研究やデータベース作成プロジェクト等を率いてきた小松和彦所長代表の「妖怪研究会」と、近年の成果報告書『進化する妖怪文化研究』(小松和彦編、せりか書房、2017年)をめぐる話題でした。山田奨治教授・安井眞奈美教授・木場貴俊プロジェクト研究員の3名が、それぞれの立場から研究会の歩みを振り返り、長きにわたる共同研究の積み重ねが、今やYōkai という国際語を生み出し、「妖怪」文化を学界のみならず、社会一般にまで広く浸透させた成果を評価しました。一方で、新しい世代や在野の研究者と日文研がどのように関わっていくべきか、また、成果発信の難しさと今後の多様なメディアのあり方について、聴講者とともに活発な意見が交わされました。