■トピックス  2019年

2019-01-22 日文研の話題

[木曜セミナー・リポート]「時間情報学」のパイオニア見参(2018年12月20日)

 平成30年の最後を飾った12月20日の木曜セミナーでは、昨夏に着任した関野樹教授が自己紹介を兼ねて、「昔の日付をコンピュータでいかに扱うか?――「時間情報学」という新たな考え方」というテーマで、自身で開発したソフトウェア “HuTime” を紹介しました。

 大学院ではミジンコ等の生物を研究していたという異色の経歴を持つ関野教授が現在ライフワークとして取り組んでいる「時間情報学」とは、従来存在していなかった学問で、「ならば創ってやろう」という意気込みでスタートしたそうです。扱うテーマは、ずばり「時間」。時間情報の生成・可視化・解析・保存などを対象に、理論の構築と技術開発を行っています。どちらかというと理工系に思える学問ですが、これが実は人文社会系の研究にとってかなり有用であることが、以下のような説明を聴いて理解できました。

 オリジナルのソフトウェア “HuTime” を含む各種のサービスは、時間情報を扱う基盤となるコンピュータ・システムで、例えば、暦や時制など、時間軸の異なる情報を連携させたり、時間を示す語彙(戦後、バブル期等々)を収集・提供したり、「17世紀後半」「1930年頃」といったあいまいな時間表現さえもデータ化し、適切に取り扱えるようにしてくれるという優れものです。当日は特に、和暦を中心とした古い日付の処理を簡便化する機能をもつ “HuTime暦変換サービス” について、デモンストレーションを行いながら解説してくれました。例えば、和暦の年表を調査グラフや地図と組み合わせて作成しようとする場合、既存のコンピュータ(ソフトウェア)には明治以前の和暦表記をそのまま扱う機能はありませんでした。変換ツールがあっても、年号・年・月・日を別々に入力する手間がかかるうえ、一度に複数データを処理できないといった弱みがありました。“HuTime暦変換サービス” では、入力に使用できる暦を、和暦(南朝/北朝/明治以降の旧暦)、ユリウス/グレゴリオ暦、民国暦、ユダヤ暦など10種類以上そろえ、現在も増設中です。入力した日付表現を解釈する、複数のデータを一括変換して結果を任意の書式に整形する、さらに、出典を明確化する、という特徴を備えています。

 「時代はデータベースからデータへ」という結びの言葉どおり、その便利さと汎用性が評判を呼び、“HuTime” の利用者は国内から海外へと確実に広がりを見せているようです。
 
参考:HuTime暦変換サービス http://www.hutime.jp/basicdata/calendar/form.html
 
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)