■トピックス  2019年

2019-01-21 日文研の話題

[日文研企画展リポート]「おいしい広告2――ヨーロッパと日本の酒・煙草・菓子のポスター」開催中

 国際日本文化研究センター(日文研)では12月17日より、京都工芸繊維大学との共同主催により、同大学美術工芸資料館にて「おいしい広告2――ヨーロッパと日本の酒・煙草・菓子のポスター」展を開催しています。

 機関拠点型基幹研究プロジェクト「大衆文化の通時的・国際的研究による新しい日本像の創出」との連携企画による本展では、近代に入り嗜好品として広く親しまれてきた酒・煙草・菓子の広告に焦点を当て、京都工芸繊維大学美術工芸資料館が所蔵する国内外の優れたポスターコレクションを中心に、日文研所蔵の広告資料を交えた50点余りを展示しています。

 会場では「酒」「煙草」「茶・コーヒー・清涼飲料水」「菓子」というテーマ別に部屋が分かれ、それぞれに鮮やかな色彩の大型ポスターが並ぶ様子は圧巻です。広告商品の多くが、ヨーロッパから日本に入った、当時「ハイカラ」なものばかり。緑色の悪魔が洋酒の瓶を開けて魅惑的な香りに誘ったり、金髪の女性が世界中の人びとに紅茶をふるまったりと、フランスやイギリス等で制作されたポスターは、主に味覚そのものをアピールしている点が印象的です。それに対し日本人向けの国産ポスターでは、特に酒や清涼飲料水、菓子などに関して、「絶対に防腐剤を含まず」「栄養価が高い」など、興味はあるけれど口に入れることに慎重だった大衆感情に配慮した広告コピーが目立ち、時代の空気感そのものを味わうことができます。また、昭和の美人画家として人気を博した東郷青児や、京都で活躍した女流画家広田多津らが手がけた作品を見られる貴重な機会ともなっています。

 最後の小部屋には、日文研所蔵のタブロイド判広報誌『森永月報』(1920年代)や懐かしい菓子のおまけなどの広告関連資料コーナーのほか、戦前から戦後にかけてパリを拠点に活躍し、藤田嗣治とも親交のあったグラフィックデザイナー里見宗次の特集コーナーなども設けられ、近現代における嗜好品広告イメージの変遷に加え、洋菓子産業による文化的な営みの一端も紹介しています。

 本展は、大学共同利用機関法人人間文化研究機構「博物館・展示を活用した最先端研究の可視化・高度化事業」の一つとして、2月23日まで開催中。


(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)