■トピックス  2019年

2019-01-08 日文研の話題

[Evening Seminarリポート]スペイン語圏で語り継がれる日本の芸能 (2018年12月6日)

 12月6日、マウリシオ・マルティネス・ロドリゲス外国人研究員(コロンビア工科大学 講師)を講師に迎え、英語によるイブニングセミナーが開催されました。
 
 “Japanese Folk Performing Arts as Intangible Heritage”(無形文化遺産としての日本の伝統芸能)と題した発表ではまず、自己紹介を兼ねて、出身地であるコロンビアの首都ボゴタの地理をはじめ、ガブリエル・ガルシア=マルケス(作家、ノーベル文学賞受賞)、フェルナンド・ボテロ(画家・彫刻家)ら郷里の芸術家が育んできた文化的土壌について語りました。そして、専門である日本およびアジアの芸能をスペイン語圏に紹介する取り組みとして、自らプロデュースしているネットラジオ番組や、研究テーマである日本芸能の「スペイン語百科事典」ともいえる私設ウェブサイト “ARTES ESCÉNICAS DE JAPON” について紹介してくれました。
 
 ロドリゲス研究員がスペイン語によるウェブサイトを立ち上げたのは、アジアの芸能に関する研究者が少ないスペイン語圏では、専門書の需要が見込めず、情報も限られているのが大きな理由だったといいます。日本の伝統芸能のカテゴリーや関連する規定などの調査にあたって、まずベースとしたのが、公式に指定されている重要無形民俗文化財リストでした。しかし、実際に調べてみると、例えば、島根県の石見神楽(いわみかぐら)など、時代を経て変容したいくつかの芸能は文化財保護法の条件に合わず、リストからこぼれ落ちていることがわかったそうです。また、「人形芝居」に関しても、文楽や人形浄瑠璃以外に、車人形や乙女文楽など、長い伝統を有するにもかかわらず、今日では忘れられつつあるものが数多いのだとか。
 
 当日は、「神楽」「風流」「語り物」「延年」「渡来芸/舞台芸」・・・といったジャンル別、また、「沖縄」「アイヌ」といった地域・民族別に、フィールドワークで撮影した珍しい映像をふんだんに織り込みながら、日本の芸能の奥深い世界を見せていただきました。
 
(参考)“ARTES ESCÉNICAS DE JAPON”  https://www.japonartesescenicas.org/

 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)