■トピックス  2018年

2018-12-25 日文研の話題

[日文研フォーラム・リポート]過疎地に学ぶ、日本の福祉の未来(2018年12月11日)

 12月11日、ハートピア京都にて、楊春華・外国人研究員(中国・南開大学周恩来政府管理学院准教授)を講師に迎え、日文研フォーラムが開催されました。「高齢化するアジア社会における家族の変容―日本の過疎地の高齢者福祉に関する調査研究」と題する講演に、中国人留学生を含む約60名が参加しました。

 楊研究員は日本を、アジア諸国の中で最も早く高齢者福祉の問題に直面した「課題先進国」と定め、他の国々がその経験を活かせるか、検討する必要があると主張します。自らも母親の介護を経験し、高齢者の孤独に直面したことをきっかけに、これまで、中国の農村社会における介護状況の調査を続けてきました。そして、例年以上の猛暑日が続いた今夏、日本の事例調査として、徳島県海部郡海陽町と山口県岩国市本郷町でそれぞれフィールドワークを行っています。

 当日は、数多くの記録写真を基に、日本の過疎地における高齢者福祉の実態を、町民とのふれあいエピソードを交えながら、生き生きと報告してくれました。また同時に、それら調査結果をふまえて、これからは「疑似家族の時代」であり、高齢者介護においては、家族以外にも地域の信頼できる人間関係づくりが重要だと総括しました。

 コメンテーターを務めた落合恵美子・京都大学教授は、発表のなかでも特に、「健康な65歳以上の層を増やすことにより、人口増加を目指せばよい」という楊研究員の提言は、目からウロコの発想で、活力ある社会を生み出す大きなヒントになる、と感想を述べました。


(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)
 
発表を行う楊外国人研究員
発表後の談話の様子