■トピックス  2018年

2018-05-18 日文研の話題

[日文研フォーラム・リポート]日本の戦争映画が放つメッセージ戦争(2018年5月8日)

 5月8日、ハートピア京都にて、ディック・ステゲウェルンス外国人研究員(ノルウェー国立オスロ大学准教授)を講師に迎え、日文研フォーラムが開催されました。「日本国民の戦争記憶をめぐる映画戦争」と題する講演は、200名を超える参加者であふれ、立ち見も出るほど盛況でした。

 日本の近現代史を専門とし、その一環で戦後日本の戦争映画を扱うステゲウェルンス研究員は、日本で「戦争の記憶をめぐる映画戦争」が開始されたのは、1952年の占領終了以降と言います。独立系左派の監督が戦争の暴力性に着目する反戦映画を撮り続ける一方、新東宝などの大手映画会社は日本兵を美化する作品製作を通じて映画産業の主流を成していく。そのような「異なる戦争観」をめぐる戦争が繰り返されてきた日本の戦争映画の系譜を丹念にたどり、後半では近年の大ヒット作『永遠の0(ゼロ)』のように、より巧妙なストーリーや描写によって50年代の反「反戦」映画を再現する新たなタイプの作品が生まれている現状を指摘しました。

 「日本の戦争映画はすべて政治的声明である」という強い言葉で結ばれた講演後は、コメンテーターの細川周平教授と新司会者の吉江弘和助教も加わり、海外諸国の戦争映画との比較や、戦争映画における女性の描かれ方など、興味深い話題についてのやりとりが続きました。


(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)