■トピックス  2018年

2018-02-21 日文研の話題

[日文研フォーラム・リポート]周耘・外国人研究員が美しい歌声を披露(2018年2月13日)

 2月13日、ハートピア京都にて、周耘・外国人研究員(武漢音楽学院教授)を講師に迎え、日文研フォーラムが開催されました。「悠久なる郷(ふるさと)の響き――黄檗声明の中国的要素」と題する講演は、中国から駆けつけた学生を含む195名の聴衆が集う盛況ぶりでした。
 かつて中国から渡ってきた臨済宗の高僧、隠元隆琦によって京都宇治に創建された「黄檗宗大本山萬福寺」。そこで現在もなお伝承され続ける儀礼音楽「黄檗声明」に出会い、大陸的な響きに強く惹かれたという周教授は、その魅力と特徴について、終始ゆったりとした口調で語りました。なかでも、中国的な「華風」要素を色濃く残す声明の旋律が、曲の途中から都節(みやこぶし)音階を基礎とする「和風旋律」へと転調する様子を解説する場面では、美しく通る歌声で朗々と実演し、その荘厳な響きに場内が一瞬静まりました。萬福寺に何度も足繁く通ったことで特別に許可されたという実際の法会を撮影した動画や、もともと口頭で伝承されてきた声明を自ら書き起こした楽譜など、貴重な資料も公開されました。
 明清代の仏教音楽が日本化されながらも3世紀半もの長きにわたり伝承されてきた理由の一つとして、周教授が「郷愁が故郷の響きを留めた」と語ったのに対し、講演後、コメンテーターの細川周平教授は「郷愁とは、職務とは別に、もっと私的レベルで表現することではないか」と疑問を呈され、ひととき、「郷愁」をキーワードにした興味深い議論も展開されました。
 
[気になった、ひとこと]「日本のコマーシャル音楽は怖い」
=周教授によると、コマーシャルなどで流れる日本伝統の子守歌の旋律は、中国人(特に子ども)の耳には寝るどころじゃないほど、怖く聞こえるそうです。
 
(文・白石恵理 総合情報発信室 助教)
 
周耘・外国人研究員による講演
フォーラムの様子